
棋譜添削(三間飛車対右四間飛車)
前局同様に棋譜添削を行います。
まずは動画をご覧になってから添削の方を見て下さいね。
22手目33銀まで図
33銀は作戦の幅が狭まるので疑問手です。
角道が止まってしまうため、先手に好き勝手組まれてしまうからです。
それに、33の銀は44銀~55銀と使うつもりでしょうが、この場合はまだ56歩~57銀(25手目57銀まで図)と、
「歩越し銀には歩で対抗」
の格言通りに対応される余地があり、せっかく出た二枚の銀が中途半端な駒になってしまうのです。
25手目57銀まで図
ここまで進んでしまうと、後手の攻め駒の捌きがつかず、かと言って駒組みに厚みや堅さを求めることも出来ませんので、右四間飛車の作戦は失敗と言えます。
ただ、21手目38銀まで図で、後手はすぐに仕掛けにくいという事情もあります。
21手目38銀まで図
ここから65歩と仕掛けると、以下、同歩 88角成 同飛 65銀 63歩 同飛 82角(B図)となり、香取りが受からず、形勢は難しいものの後手が好んで踏み込む変化ではないかと。
B図
B図からは92香 91角成 71金 92馬 44角 98飛 76銀(C図)のように進むことが考えられますが、なかなか難しいですね(笑)。
C図
少なくとも私は、先に駒損をする後手を持って指したいとは思わないです。
そこで後手も22手目で一工夫してみます。
「角道を通しながら次に仕掛けられるように待つ……」
そんな手があったりします。
22手目で推奨したいのは、33角(D図)です。
D図
「えっ? これ、何が違うの?」
と思った方もいると思いますが、雲泥の差があるんですね。
D図以下、先手は試しに46歩と待ってみます。
そして、後手は予定通り仕掛けます。
46歩 65歩 同歩 同銀(この手がポイントです) 33角成 同桂 63歩 同飛 82角(E図)と進み、
「全然変わらないじゃんっ!」
って思った人もいるでしょう。
E図
一見、香取りが受からずあまり変わり映えがしないように見えます。
しかし、E図には69角(F図)と切り返す手があるんですね。
F図
狙いは、飛車か金を取って92に打ち、82の角を捕獲することです。
F図では先手が旨く82の角を生還させることが出来ないのをご確認下さい。
つまり、D図のように一手待てば、後手は65歩と仕掛けることが可能なのです。
ですが、先手も必ずしもE図のように63歩~82角と打つとは限りませんので、仕掛けは成立はしますが後手が著しく指し良くなるわけではありません。
具体的には、D図から、46歩 65歩 同歩 同銀 33角成 同桂 77銀 66歩 68飛(G図)で、互角の将棋となります。
G図
右四間飛車は、ちょっとした形の違いで形勢が変わってくる戦法なので、仕掛ける前の陣形をどう築くかが肝となります。
その辺が的確に出来るようになると勝率もグッと上がりますので、心掛けて指すと良いと思います。
38手目63銀まで図
63銀は、
「中央に銀を二枚並べておいても身動きが出来ないので、一回引いて建て直そう」
という意味で、この際の考え方としては間違っていません。
ですが、やはり一回出た銀を撤退するのは辛いですね。
なので、こうなる前に考えることが大事と言えます。
61手目34歩まで図
34歩は緩いです。
ここはもっと端的に局面を決定付ける一手があります。
頭の中で34歩を打っていない局面を思い浮かべて、少し考えてみて下さい。
正解は33歩(H図)です。
H図
これ、34歩と33歩では、ぶっ大差なんです。
H図からは33同角しかありませんが、34歩(I図)で投了するしかなさそうですよね(笑)。
I図
先手はこんな分かりやすい決め手を逃していてはダメですよ(笑)。
79手目35飛まで図
35飛は読みの入った一手です。
同玉と飛車を取ると、79角(J図)以下で詰んでしまうのを見越しています。
J図
なので、35飛と出た局面は先手勝勢です。
このあと、いくばくもなく終局となるのかと思っていたのですが……。
89手目34飛まで図
34飛は悪手ではありませんが、決め手を逃しました。
ここでも34の飛を頭の中で35に戻して考えてみて下さい。
正解は二通りありますので、両方とも答えられれば満点です。
正解は、79角(K図)と25桂(L図)です。
K図
L図
どちらも一手で必死が掛かります。
必死=次に必ず詰み、ですので、明確な決定打となります。
91手目25桂まで図
25桂も悪手ではありませんが、微妙に芯を外しています。
ここは、14飛 22玉 34桂 21玉 33桂 32玉 11飛成(M図)とした方が、本譜より遥かに分かりやすいです。
M図
この辺の数手で、先手は何度も決定的な寄せを逃しています。
もしかすると、少し楽観していたのかもしれませんが、決められる時にしっかり決めるようにしたいですね。
93手目33飛成まで図
33飛成は、詰めろにもなっていません。
つまり、一手パスに等しく、寄せとは到底言えないです。
散々相手玉を追い回した挙句にこの飛車成では、少々寂しいですね(笑)。
ここはやはり14飛(N図)が良いですね。
N図
14飛以下は、21玉 33桂不成 22玉 34桂 33玉 44銀打 同歩 同銀32玉 11飛成(O図)で寄りです。
O図
105手目61飛まで図
紆余曲折を経た結果、辿り着いたのが61飛です(笑)。
さっきまで、何度も寄っていた後手玉がまだしぶとく生きながらえている上に、詰めろでも何でもない61飛を打たざるを得ないのでは、明らかに変調です。
ただ、運が良いことに、まだ先手が良いんですね(笑)。
先手は55の銀が中央で威張っているのが大きく、すぐには詰めろが飛んで来ないのです。
ですが、本来ならこんな局面になる将棋ではなかったはずなので、勝ったとはいえ、先手には猛省してもらいたいですね(笑)。
先手はとにかく寄せを反省すべきです。
あと、61手目33歩みたいな明快な勝ちを掴みそこなったことも、大いに反省すべきでしょう。
後手は、序盤ですね。
色々と工夫しようとしているのは分かるのですが、何を実現して何を防ごうとしているのか、意図が明確ではない手が多々、見受けられますので。
二人とも、しっかり反省して、次につなげられると良いですね。