それ以上でも、それ以下でもなく。
「カフェが好きです」と言うと、「へえ、コーヒー好きなんですね!」と言われることがよくありますが、私は正直なところ、コーヒーそのものはあまり得意ではありません。ブラックコーヒーも飲めないことはない……のですが、甘いもの派の私にはビター成分が強すぎて、ほんの少しの量で満足してしまいます。
だから、家で飲むのも、カフェでオーダーするのも、決まってラテなどミルクやシロップの入ったマイルドなものばかり。コーヒー通の方からすると、子供だなあと思われるかもしれませんが、私はその、ほどよい甘さの中にほんのり感じるコーヒーのほろ苦さがなんとも好きなのです。
カフェ好き=コーヒー好き、と考えてしまうのは、もちろん自然なことだと思います。だけど、カフェにはコーヒーのほかにももっといろんな要素があって、きっと私はそういうひとつひとつの要素たちによってつくり出される空間とそこに流れる時間に惹かれているのだと思います。
例えば、お店の雰囲気や照明の具合、丁寧に豆を挽く香ばしい香り、ショーケースに並ぶ焼き菓子やサンドイッチのおしゃれな佇まい。馴染みの店員さんとのちょっとした交流だって、どれも私の「カフェが好き」という気持ちに欠かせない大切な要素です。「好き」な要素に満ちた空間で過ごすひとときはいつも、私の心をそっと包み込んでくれます。
カフェ好きというからにはコーヒーの苦みも含めて好きにならないといけないかなあ、となんとなく気にしていた時期も過去にはありましたが、それ以上でもそれ以下でもなく、自分にとって本当にちょうどいい塩梅で楽しむことの心地よさに気づいてからは、無理に背伸びをしなくなりました。
そして、私のこのスタンスは、なにもカフェタイムに限ったことではなく、ほかのいろんな趣味にも共通する根っこのようなものだなと、今この文章を書きながら思った次第です。