「フルーツジュースに満たされたい日」のこと。
想像してみてください。もしも今、おなかを空かせているあなたの目の前においしそうなフルーツがどっさり置かれて、「さあ、どれでも好きなだけ食べていいよ」と言われたとしたら。
蜜がたっぷりの真っ赤なりんご、フレッシュでみずみずしいオレンジ、つぶつぶ弾けそうなぶどう、その他いろいろ。おそらくほとんどの人は喜んで、好きなものを好きなだけ選んで食べてしまうのではないでしょうか。
ところが、ここに例外が一人。ちょっと困ってこう答える人が。「すみません、私、フルーツ苦手なんです」
* * *
……もちろんこの例外というのは、私自身のこと。上のセリフは、これまでの人生で何度言ったかわからないくらい繰り返してきた言葉です。「えーっ!なんで?」「こんなにおいしいのに」……これもまた、定番の反応。そうですよね、私も我ながら不思議です。
特定のフルーツが苦手、という方はいても、フルーツ全般が苦手、という人は珍しいのではないかと思っていますが……どうなのでしょう。ネットの世界にはもしかすると、もっといらっしゃるのかな。(ネット上でのお知り合いに一人いらっしゃいますが、私の周りでは今のところその方だけです)
そしてさらに私の場合、「苦手」といっても全面的に拒絶しているというわけではなく、厳密にいうとフルーツの果肉の食感が苦手なので、つまり、ジュースとか、シロップとか、いちご味のチョコとか、そういった果肉感を感じないようなものであれば食べられるんです。とても好き、というわけではないものの、たいていのものは果汁やフレーバーのみなら楽しめます。
(なお、バナナだけは例外で、食感も味も苦手なのでどうしても食べられません。)
そんな中途半端でややこしい好みのせいでしょうか、自分でもいまだに不思議な感覚なのですが、時々、苦手なはずのフルーツを見て「おいしそう、食べてみたいな」と思ってしまうことがあります。
例えばテレビのスイーツ特集だったり、絵本の挿絵だったり、家族や友人が食べている姿だったり。ともかく自分の好みや理屈抜きにして、「おいしそう」に見えるといいますか……。
仮に食べてみてもあとあと後悔することはわかっているので、結局は見ているだけなのですが、本当になぜだか時々、無性にフルーツ成分を求めている自分がいることに気が付く日があるのです。(もしかすると、昔から刷り込まれてきた「適度にフルーツをとることは体に良い」というイメージからそう感じるのかもしれません。)
そしてそれがたまたま、今日でした。
こういうときの私の救世主は、果汁100%のミニ缶ジュース。
160mlの小さなスチール缶に入っているので、私にとっては多くもなく少なくもなく、ちょうどいい量。無理なく美味しく、求めている成分をきちんと得られる(気がする)すぐれものです。今日飲んだのは、リンゴジュースでした。
ほどよく冷やした缶から少しずつ飲むそれは、私にとってはなんだか少し特別なもの。普段ほとんど飲まない分、くっきり濃くてさわやかに美味しい。求めていた成分が体にすっと沁みこむような感覚と共に、心もしっかり満たされたような気持ちになりました。
フルーツと私の一風変わった距離感は、おそらく今後もこんな感じで続いていくのでしょう。自分の好みとの付き合い方も、きっと人それぞれ、ですよね。
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