『ストーリオブマイライフ』:結婚=女性の幸せ?
映画館解禁に併せて、前評判がすっごい良いこちらを鑑賞。
席は余裕で空いていて、新作上映は2〜3本程度。あとは旧作だったけど、それも映画館で見る数少ないチャンスだと思うとちょっと目移りした。
コロナの影響で、今は映画鑑賞を積極的にできないけど、
前後左右の感覚が空いているシートで鑑賞するの最高!ゆとり!!!
当たり前だけど劇場の没入感は段違いだった。やっぱり映画館で体感しないと意味ないなーと素人ながらめっちゃ思った。
そんな貴重な経験を通して観た『ストーリーオブマイライフ わたしの若草物語』は、早くも今年観た作品でかなり上位になりそう。
結婚は女にとっての幸せ?
18世紀〜19世紀の自伝的小説『Little Women』が原作の映画。監督がインタヴューで「原作を読んだけど今に通じることが多かった」と話している通り、女性の権利が当時よりかなーり得られている今でも、女性が幸せに生きていくために必要なものが何か?を考えさせられる作品だった。
主人公ジョーは、小説家を夢見て、自由な中年女性になる!と豪語。「結婚すれば女性は家庭に入るもの」という当時の固定概念に反抗するかのように、ローリーのプロポーズも断ってしまう。
オールドスクールな叔母は「女は(経済的に)いい人と結婚するしか幸せになれない」という概念を、ジョー達に都度提示する。しかし、彼女らは最終的にお金や利己的な理由ではなく、本当に愛する人を見つけて結婚する。
結局結婚することでハッピーエンドを迎えているのだけど、それが必ずしも「女性の幸せではない」ということが、この映画で描かれている。
特に最後のシーンの演出が巧みで、ジョーの結婚シーンだけ本当なのか創作なのかわからないようになっている。その代わりに、彼女の小説が発行され、世に出ていく姿はしっかりと丁寧に描かれる。
ジョーの夢はあくまでも小説家になること。それで彼女はきっと幸せになったのである。「結婚≠幸せ」というのではなくて、結婚もある意味では幸せだし、別の方法でも女性にとっての幸せはあるんだよ、と明示している映画だった。単にジョーだけを描くのではなく、四姉妹+母の生き方を描いているところも含め。
監督は36歳の美しい女性
グレダ・ガーウィグ監督は、『フランシス・ハ』や『20センチュリーウーマン』に出演しながら、『レディ・バード』を監督し、注目を集めた女性。
若手監督で、青春映画を撮る人なのかなーと勝手に思っていたので、こんな成熟した完成度の高い作品を撮るイメージがなく、めっちゃびっくり。
彼女は、昨年第一子を出産しているけど、パートナーのノア・バームバックとは結婚はしていない。そんな彼女の背景を知れば尚更、本作品を作った意図を感じとってしまわずにはいられない。
彼女は女優だったり、脚本家だったり、誰かの恋人だったり、母だったり、いろんな側面を持ちながら、「グレダ・ガーウィグ」として活躍している。彼女が様々な女性の幸せのあり方を、現代に再解釈した『Little Women』で定義した。これからの時代は、女性のみならず、みんながそれぞれに何かの肩書きや幸せのテンプレじゃなくて「その人そのものの幸せの定義」を認め合えるような世の中になればいいな、と感じた。
ディティールもとっても素敵…
今回はそういうストーリーを追うのに精一杯すぎた。要所要所の人生の選択シーンでかなり泣いてマスクをビショビショにしたし、あまりの号泣に鼻水まで出て横の人にコロナ?!って思われないか不安だったせいで細部まで気を配る余裕がなかった…。もうね、現在と過去の対比が素晴らしくて感情移入どころではないし、ある程度ライフステージに立たされたことのある人なら泣かずにいられない。
でも、以下のインタビューで細部まで語られているように、主題を見せる上での演出がかなり凝られていた。過去と現在で描き分ける際のコントラストや、登場人物全員の個性、アカデミー賞を受賞した衣装の美しさ、など注目ポイントはめちゃくちゃあったので、もう一回くらい映画館でみたいな…。
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