缶蹴り恋愛逃走中 毎週ショートショートnote
ついに今日は、町内缶蹴り大会の日。
僕は、片想い中のユイちゃんに告白する覚悟を決めていた。
狙いは
『缶を蹴った瞬間に、告白する』
という作戦。
これなら、カッコよく決まるはず....。
ゲームが始まってすぐ、ユイちゃんを見つけた僕はこっそり近づき、
「今こそ!」
と声をかけようとしたその瞬間
ユイちゃんが
「あっ、見つかった!」と、
猛ダッシュで逃げ始める。
僕は焦った。
ユイちゃんは、全速力で逃げ回る。
僕も
「これは恋の鬼ごっこだ!」
と気合いを入れて、必死に追いかけるけど、あと一歩のところで、また逃げられる!
一方、他の参加者たちはそんな僕らの様子を遠くから見て、呆れていた。
タケシは、
「おい、缶蹴りの大会だぞ!
恋の告白大会じゃないんだって」
タモツは、
「こいつ、毎回逃げられてるのに懲りないなぁ」
と言ってた。
だんだん体力も尽きてきた頃、やっとユイちゃんが隠れた木陰を見つけた。
僕は息を整えて、勇気を振り絞って彼女に近づいた。
「ユイちゃん、僕、ずっと君が.....」
しかしその瞬間、今度は彼女が驚いたように叫ぶ。
「えっ、缶蹴りーーー!!」
まさかの缶が転がり、全員が
「アウト!」
周りから大歓声が上がる中、ユイちゃんが振り返って照れたように笑っている。
ユイちゃんは、
「あのさ、そんなに追いかけて来なくてもいいよ。疲れるだけでしょ」
僕はユイちゃんにそう言われて返す言葉がなかった。
だけど、次の缶蹴りには、絶対がんばろうと思うのだった。