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マフラーに/シロクマ文芸部

マフラーには、忘れられない思い出がある。それは三男の息子の高校生の時の姿。
中学生の時には、とうに私の背を超えて、私を見下ろすようになった。
でも、中学生の頃はバドミントンの部活動に忙しく、それに加えて無口になる時期。会話をする時間は、極端に減っていた。
それが、高校生になり電車通学になると、朝夕と駅まで送り迎えをしなければならなくなり、無口になった息子を乗せて駅まで行き来していた。夕方というか、夜、電車が着く頃になると、私みたいに子どもを待つ車で駅前は溢れるので私は駅前にあるコンビニで買い物しながら、コンビニの駐車場で待つことが多かった。

ある冬の日、コンビニの中で息子と真正面に向き合ったことがある。
「ドキッ」としたのだ。
見下ろす息子、見上げる私、首には自分で買ったのかそれとも彼女にもらったのか、マフラーをぐるぐるに巻きつけている姿。その視線は私をじっと見ていた。

『な、何?💦それにしても、デカいなー』

私はちょっと焦りながらそんなことを思っていた。

その時、息子が放った言葉は、

「チョコ欲しいんだけど」

「あ、ああ、分かった。どれか選んで」

そうだ、息子はチョコが大好きだったっけ。選んだチョコは、よく食べてる板チョコだった。

会計を済ませて車に乗ると、早速チョコを食べ始めた。そんな時は口もなめらかで、こっちが聞いたことに対して答えてくれた。些細な会話だったけど、話せるのは嬉しかった。なんせ男の子は一時期、話したがらない生き物に変わってしまうから。

マフラーをぐるぐる巻きにしていた、あの息子の姿は、私の目に焼き付き、今でも残っている。
今は自活して遠くの街で暮らしている息子。時々、「元気かい?」とLINEを送り、「うん、元気でいる」と返事が来る程度。

マフラーの思い出、ぐるぐる巻きの思い出話でした。


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てみ
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