無人島生活福袋/毎週ショートショートnote
この世に絶望しか持てない俺は
ある日、懸賞で当たりを出した。それは
『無人島生活福袋』という名前だった。
「俺、無人島生活するよ」
父母にそう言って俺は本土を離れ船で無人島に向かった。
無人島は大きな木が1本あるだけの本当に何もない島だ。
俺は早速荷物の中からキャンプ道具を出しテントを建てた。
すると、ドローンが飛んできて、あるものが落とされて来た。
すぐそばに落ちたそれは「福袋」と書いてある。
「おっ!来たか。中身は何だ」
福袋を開けてみた。
歎異抄が一冊入っていた。
「これが歎異抄か」
新聞の広告で見た事があった。
「無人島へ行くなら歎異抄を持て」
そう広告に書かれてあった。
俺は寝食も忘れ歎異抄を読み耽った。
知らないうちに涙が溢れている。
「俺に必要なものはこれだったんだ」
俺は1本の木から本土に戻る船を作り本土に帰った。俺の人生は、無人島から変わった。もう絶望する事もなかった。いつも他人のせいにしている事に気づいた。あるべき姿になった俺に迷いは無かった。