不眠症浮袋/毎週ショートショートnote
仕事が忙しく身体は疲れているのに不眠症な俺は、とある寺に行ってみた。そこには僧侶がひとり居て、事情を話すと、浮袋を渡された。
「これは『不眠症を治す浮袋』です。海に行き使ってみなさい」と言われた。
言われた通り、海に行き浮袋に身を託し浮かんでみた。すると、眠気が出てきて浮袋でプカプカ浮かんだまま眠ってしまった。
気が付くと沖に流されている事に気付き、しかし、どうしようにも手立てがなく流されてしまうしかなかった。
そして、無人島を見つけた俺は、そこに向かって泳いだ。無人島に着くと、誰かが使ったようなテントや缶詰がたくさんあって、それで空腹を満たした。もう不眠症では無い。
俺は誰かが残したテントの中でぐっすり眠ることが出来た。幸せな気分だった。
「もう帰りたくない」と思った俺は、テントの中にあった釣り針で魚が釣れるか試してみた。なんと魚はすぐに釣れて、火を起こした焚き火で焼いて食べた。
「人間ってやつは何処でも生きていけるもんだな」と思った俺は、その無人島で生涯過ごす事にした。