見出し画像

紅一点の魔物


魔物が住む村があった。其処には良い魔物と悪い魔物が共存していた。
そして、魔界役所で働く魔物のシエラは、この村でたった一人の「紅一点」だ。

役所で毎日一人で苦情処理やトラブル解決を頑張っているけど、誰も手伝ってくれない。「紅一点」に遠慮しているのだ。

そして、シエラの「紅い瞳」には、古代の呪いが関係していた。彼女はその秘密を探しながら、自分の役割と向き合っていた。

今日は洞窟へ向かいドラゴン退治をして、
次に良い魔物と悪い魔物のいざこざを一人で解決した。誰にも頼れず、自分の「紅一点」という存在に悩みながら。

ある日、村長から呼び出されたシエラは、自分の「紅い瞳」の正体が、この村を救う鍵だと知る。そして、「紅一点」のシエラしか出来ないことだと言われ、ドラゴン退治をした洞窟へ迎え、と重ねて言われた。
シエラは自分の力を受け入れ、この村の平和を守るために立ち上がる。

そして、ドラゴン退治をした洞窟の最深部まで行くと、シエラの母が壁にくっ付いたままで生きていた。

「シエラ、よく来たわね。こんなに大きくなって」
母の目も「紅」だ。

「紅い瞳の正体を教えて」
シエラは母に問うた。

「私を倒せば分かるわ。その剣で私の胸を突きなさい。そうすれば、私も自由になれる。あなたの定めなの」

「お母さん、死んでしまう......」

「大丈夫。私はあなたと一緒になれるの」

シエラは決心し母の胸を剣で突いた。

すると真っ赤な霧に包まれたと思ったら壁がガラガラと崩れて、母は自由になった。

「お母さん!」

シエラが母に近づくと母は、嬉しそうにシエラを見て言った。

「ありがとう、シエラ。私はいつもあなたと一緒....」

そう言うと、母は、一つの紅い輪になりスーッとシエラの体にのまれていった。

その時、シエラの紅い瞳が一瞬光り、とても綺麗な紅い瞳になった。

その光は村全体を照らし、村一帯が綺麗な虹色に変わったと思うと、空は青空に変わっていった。
古代の呪いが解かれたのだった。
それによって、魔物たちは全て良い魔物に変化していた。

シエラは自分の中にいる母を感じていた。

「お母さん、いつも一緒ね、嬉しいわ」

「そう言ったでしょ。あなたの呪いも解けたわ。もう悪い魔物はいないはず。さあ、村へ行きましょう」

紅い瞳に涙を溜めながら、シエラは村に戻るのだった。


いいなと思ったら応援しよう!

てみ
いつもありがとうございます。よろしければ応援をお願いします。これからも分かりやすい記事の投稿に努めてまいります。