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働いて/シロクマ文芸部

働いても働いても、給料は、上がらない。定時に終わらなくても、サービス残業で終わる。
『こんな会社辞めたい』と思うが
後のことを考えると何に進めばいいかわからない。
何故、給料にこだわるのか、それは、
お金を稼ぐためだ。お金は、嘘をつかない。私は知っている。お金があればなんだって出来る。

私は水商売の運があると言われたことがある。絶対、失敗しないと言われた。よく当たるという占い師の言葉だった。
私の髪は長く、いつも一つに結んでいるが、それをやめて、その顔立ちなら成功すると言われた。その言葉を信じて水商売の道に飛び込んでみようかと思い立った。

ある日、スタッフ募集の看板が目に入る。銀座のバーだ。
心を決めて飛び込んだ。

「あの、スタッフ募集を見て来てみたんですが」

重厚なドアを開けると、中は夢の世界のようだった。天井には、シャンデリア、それがいやらしくない。いやらしくないとは、上品に飾られているという意味だ。壁にはこだわりのある灯りや、ソファ、カウンター席にもゆったりとした椅子が置かれていた。

そこにひとりの女性が座っていた。着物を着こなす姿は美しさそのもの、私はうっとりしてしまった。

「はい、中に入って」と言うのは、
その女性でママらしい。

「あなた、此処の商売は分かっているわよね。経験は?」

「ありません。はじめてです」

「なぜ、此処に?」

「働いてお金を稼ぐためです」

「お金を貯めて何かしたいの?」

「いいえ。何かしたいなどは考えていません。お金を稼ぎたいんです。それだけです。働いて、その対価を欲しいんです」

「分かったわ。ちょっとこっちへ来なさい」

と言うとママは、裏へ招いた。

「どのドレスが似合うかしら?あ、これが良いわ。ここは、絹のドレスしか置いてないのよ。なぜかわかる?」

「本物で勝負したいからですか?」

「ふふふ、勝負ではないけど、本物でお客様にサービスするためよ」

「サービスってわかる?」

「お客様に非日常を提供して、また明日から、頑張ろうと思って頂くことだと思います」

「そうね。私たちはサービスを提供して、お金を頂くの。それにあった働きをしないといけないのよ。違法な事はしないわよ。あくまでも、このお店で良い思いを味わっていただくのよ」

「はい、やります」

「あなた、髪はあげたほうが良いわ。指定の美容室があるから、そこに行って、このドレスも着てらっしゃい。靴も持っていくのよ」

あっさりとママから衣装一式を受け取り、私は美容室に向かった。

美容室では、ホステスの女性たちで賑わっていた。

「いらっしゃいませ。ママから、電話を貰ったわ。今日は私があなたを変身させるわね。すべて任せてちょうだいね」

私はされるがまま、身を任せ変身する様子を見ていた。

自分がこれほど変わるのかと驚いた。
他のホステスも私を見てため息をついた。

「まあ、あなたって素敵よ。きっと人気者になれるわ」

そう言ってくれる者もいれば、何よ生意気な、とライバル視してるホステスもいた。

変身した私の名前は蛍という名前になった。

ママは、「予想以上の仕上がりだわ。そのドレス、着こなせる者がいなくてね、でも、あなたには似合ってるわ。いい。今日はカウンターの中から私たちの動く様子を見てなさい。しっかり見るのよ」

「はい、わかりました」

そういう私のドレスは、ラメが入っているシルバーのドレスで衿元と袖とドレスの裾にピンクがあしらわれている、とてもしなやかなドレスだった。
ハイヒールもドレスに合わせ、マニキュア、ペディキュアもそうだった。

私はカウンターの内側で、働く職場の中でお客様を出迎えることになった。




おしまい





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てみ
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