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誘惑銀杏/毎週ショートショートnote


遠い遠い昔のこと、銀杏いちょうの木から落葉した銀杏いちょうの葉が風に取り巻き、クルクル廻る頃の事、銀杏ぎんなんは『媚薬』として使われていたという。
そのため、『誘惑銀杏ゆうわくいちょう』という言葉が生まれたとか。

銀杏の実を食べると体が温まり血行が良くなる為、『男女」の間には欠かせないモノだったらしい。

銀杏の強い匂いも独特の魅力を持っているとされフェロモンのような役割も果たしていたとか。

古典文学を学んでいたみつ子は、独り身で三十路を過ぎていた。

「早く相手を見つけたい」

と思っていたみつ子は、
銀杏いちょう並木通りで、
声を掛けてくれる人を待っていた。

だが、いつもいつも、近寄って来る男性はいるものの、近くまで来ると

「なんだよ、臭いよ」

と言って、皆、逃げていってしまう。

古典文学での知識は、通用しないことに気付いたみつ子は、どうすればいいのか分からなくなり、通りに立つことをやめた。

『そんなもので、生涯の伴侶を見つけるだなんて、いけないことなんだわ』

行く先々で「臭い」と、言われ続けた、みつ子は姿を消した。

その後、秘湯と云われる温泉宿にみつ子は、いた。匂いを感じない鼻の悪い男性と一緒になり幸せを掴んだという。


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