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Photo by
aoneko
毎週ショートショートnote【手加減無用鍋】
「一切の手出しを禁じる」と言って鍋奉行は、鍋の材料から汁の何から何まで一人で支度を始めた。
あー、来たくなかった。
集まった6人は、帰りたくなって来たが、そんな大人気ない事は出来ないと思いとどまっていた。
鍋奉行とは、鍋を仕切る人。
「はい、これ食べて」「はい、これも」
と、ポンポン皆の器に入れていく。
ありがたいのだが、食べたいものが他にある人には、とても迷惑な行為だ。
「自分で取らせてくれよ」と言っても通じない。
鍋奉行の意のままに進んでいく。
そんな鍋奉行を見ていると、自分が好きそうなものばかり取り分けていた。
「おいおい、ずるいぞ」と言っても無駄だった。
鍋奉行は、他の人の箸を入れさせないからだ。
器に来たモノだけを食べなければならない6人はイライラして来た。
材料は、残り少ない。もうすぐ終わる。それだけを待ち望んでいる6人だった。
「あー、美味かったなー」
鍋奉行は、満足していた。
他の6人は
「そうですね」と気弱に返答した。
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