金色に/シロクマ文芸部
「金色に」
王様はいつもそればかり。
何でもかんでも
金色にまみれていた。
頭の冠。
金色の豪華な糸を使った刺繍が
施された金色の衣装。
そして、金色のマント。
靴まで、羊の皮を金色に染めて
また、金の糸で施された刺繍を
施した長いブーツだった。
何故それほどまで金にこだわるのか、
街の奥、山があるのだが、なんとそこから金塊が出たのだ。
それを知った王様は、街の民を金塊掘りに駆り出して、金にこだわるようになり、お城まで金色に変えようか、
いや、まずは、自分から変わろうと
思い立ったのであった。
そんな金塊だが、
すでに底をついたらしく、いくら掘っても出てこなくなってしまった。
上から下まで金色で染められた王様は
大変ご機嫌だったが
金を使いすぎたため、
国の金貨が無くなってしまった。
これでは、街の人たちの生活が
成り立たない。
「王様、国の危機を
どう致しましょう」
「ふむ、困ったことだ」
ある時、王様は街に視察に出掛けた。
金色だらけの王様を見て
街の人たちは騒ぎ出した。
「なんてひどい!
王様は私たちのことは
考えてくださらないのか」
人々は、王様に文句を並べ立てた。
血気盛んな若者たちは、暴動を
起こそうかと考えるほどになった。
「王様、民衆は、怒っております。
金が街の者たちに無いという現状に
金色で王様を飾ることを
やめることは出来ませんか」
家臣が王様に説いた
「ふむ、ワシはやり過ぎたようだ。
この衣装を全て金貨に変え、城を金色にするのも、やめることにする。そして、街の者たちに分け与えよう」
「王様、ご英断にございます」
王様は、それまで身につけていた衣装に着替え、記念として、金貨を1枚、
貰ったそうな。
街の人たちは王様の悪口を言うのをやめて、心優しい王様を良く思う者たちでいっぱいになった。
その国が後々まで栄えたことは
言うまでもなく、王様に至っては
歴史に名を残す存在となった。