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最終回/ボケ学会
「どうしたらいいんだ。こんなに
世間から評判の良いドラマがもう少しで最終回を迎えてしまう」
担当の神田は、頭を悩ませていた。
脚本家の上野に相談してみた。
「なぁ、上野、もう少し話を延ばせないか?」
「えー、それは出来ますけど、間延びしませんか?新しい話、持ってくるといいかもしれないですけど」
「出来るのか?なら、書いてくれ。上とスポンサーには、俺から話すから」
神田は、上司に話しスポンサーにも掛け合った。
それぞれがドラマの評判を知っていて『よし!それなら』と言ってくれた。
「上野!OKが出た!頼む、なんとか話を延ばしてくれ」
それから、上野は話をどうするか、あちこち考え、最終回を分割することにした。
毎週、視聴者を泣かせ、最終回にする。
『しかし、その時』と言って新たな展開を示す。
そして、最終回を繰り返すのだ。
視聴者をバカにしたような終わり方にならないかと心配されたが、最終回の盛り上がりの時、『しかし、その時』が現れてその週を終えた回は最高視聴率を獲得した。
神田も上野も大喜びだった。
「よし!いける」
そう思った。
最終回の最終回は、どうだったろう。
また視聴者を泣かせて
『しかし、その時』で来週の最終回をお見逃しなく....。
で終わった。
視聴者が離れていないことに神田は、有頂天になり、上野に檄した。
上野はさすがに『ここいらで終わらんと話がおかしくなる』と思いながら、神田の言うことを聞き話を作った。
最終回の最終回の最終回は、もうこれまでかと、思わせたが根強いファンの方たちのおかげで、これまた評判になった。
『しかし、その時』
その年の流行語大賞にも選ばれた。
さて、最終回の最終回の最終回の最終回の最終回になると上野は、ネタ切れになり、精魂尽き果て入院してしまった。
神田も上司から、「そろそろ、終わらんかい、ボケ!」と言われる始末に悔し涙を流しながら、上野の最後の脚本を俳優陣に渡した。
それを読む俳優陣たちは、ようやく話が終わることに安堵している。
皆、疲れていたのだ。
だがスポンサーは、「続けてくれ」と言って来た。神田が上野の事情を話し納得して貰った。
そして、『これが本当の最終回』は、一番前の最終回と同じ話で終わりを迎えた。
視聴者は、黙っていなかった。ドラマは大ブーイングを受けて、ネットは🔥炎上。脚本家の入院に、また炎上🔥
最高のドラマは、とんでもない汚点を残してしまうのだった。
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