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泡がシュワシュワ

私が子供の頃、炭酸飲料は、
『飲んではいけない』モノだった。
当時、一緒に住んでいた父の弟、つまり、叔父がコーラを買って飲んでいると「骨が溶けるからね。子どもは、飲んじゃいけない」と、祖父に、祖母に、父に、母に言われた。

でも、コップに注ぐ時のシュワシュワという音。
美味しくないわけがない、と思っていた。

「ひとくちだけ」

叔父に言って、
「ほら、飲んでみろ」と渡されて
飲んだ時、
口の中がとんでも無いことになった。炭酸のシュワシュワは、口の中で小爆発を起こしたようだった。
それにビリビリする。

「なにこれ。もういいよ」

これが大人の味ってヤツなのか、その時の口の中で起きたビリビリと小爆発は、忘れられずに、炭酸は飲まないと、自分は、思った。

だけど、大きくなるにつれ、炭酸飲料は、子どもの頃より、近い存在になってくる。

お菓子屋には、いろんな炭酸飲料が並んでいた。
コカ・コーラ
ペプシ・コーラ
ファンタ
そして、透明なサイダー

コーラは、骨が溶けるからダメ。
ファンタを選んだ。
ファンタオレンジにしてみた。
「ん?美味しい」
小爆発は、起きない。オレンジの味がして、ビリビリも、嫌な感じじゃない。それ以来、ファンタは、心地よい飲み物と、私の中で認定された。

夏の暑い日、炭酸飲料が飲みたくなって、いつものお菓子屋に行く。 「今日は、透明なサイダーにする」
と言って、手に取ったモノが
三ツ矢サイダーだった。

ペットボトルの中で小さな泡がシュワシュワしているのが分かる。 
蓋を開けると「シュワ」と音がする。

ゴクリ

あー、美味しい!

ただ少しだけ甘い味がするサイダーは、飲みやすい。ビリビリも、もうへっちゃらだ。

私は、三ツ矢サイダーが大好きになった。
この頃、時間が経つと炭酸が消えて、甘い水のようになることも分かった。それは、それで美味しかったけど、物足らなさが残った。

今でも、冷蔵庫には三ツ矢サイダーを常備している。

暑い中、出掛けて帰ってきた時の飲み物は、三ツ矢サイダーだ。
それで一息つける。

これからも私は三ツ矢サイダーを選ぶだろう。

コーラも飲まない訳じゃない。
「骨が溶けるから」は、嘘だったことも分かった。

炭酸のシュワシュワの、心地よさは、大人になって分かること。
私の場合は、遅い時期に知ったかもしれないが、今じゃ、そんなの関係ない。
美味しいシュワシュワは、いつも一緒だ。



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