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風鈴の思い/シロクマ文芸部

#ショートショート


風鈴と短冊の間にはぜつがあり

舌が揺れてくれないと

短冊は、うごけない

ある日、風鈴が舌に言った

「たまには揺れてくれないか」

舌は言った。

「短冊が揺れてくれないと 
   私は揺れないのですよ」

短冊は困った顔をして

「風邪が無いと揺れないの」

と、つぶやいた

「そうか、そうか、風か」

風鈴と舌は、同じ思いを共有する

「なんとか風は、吹かないものか」

その時だった

強風が風鈴めがけて吹いてきた

「ああ、違うのに、こんな風じゃないのに」

カランカランカランカラン
ガランガランガランガラン
ガランガランガランガラン......

風鈴は、「違うのに、違うのに」

と、言い続けている。

部屋の中から 

おばあさんがやってきた

「うるさいね、まったく
 風情も何もあったもんじゃ無い」

と、言うと

風鈴を片付けてしまった

片付けられた風鈴は、

棚に仕舞われ、二度と表に出ることは無かった


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てみ
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