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一衣帯水の地のバレンタイン/青ブラ文学部




対馬つしまに住む高校生の奈々は、韓国の釜山ぷさんにいる幼なじみのハクに片想いしていた。

ハクは5年前まで対馬に住んでいたが、韓国へ引っ越してしまい、それ以来連絡が途絶えていた。
それでも奈々はハクを忘れられず、
「バレンタインにチョコを渡したい」と思っていた。

しかし、韓国まで行くのは無理。
どうすればいいか悩んだ奈々は、対馬と釜山を行き来するフェリー会社の人に相談してみることにした。

「このチョコ、釜山に住む人に届けてもらえませんか?」

「ん?なんて名前なんだい?」

「ハクと言います」

すると、フェリーのスタッフのおじさんが驚いたように言った。

「ハク? もしかして、あのハクか? 今週末、対馬に来るって聞いたぞ!」

なんと、ハクが久しぶりに対馬へ来ることが分かった。
奈々は驚きつつも、
嬉しくてたまらなかった。

そしてバレンタイン当日。
港でフェリーを待っていると、
降りてきたハクと目が合った。

「……ナナ?」

久しぶりに聞くハクの声。
奈々はドキドキしながら、
持っていたチョコを差し出した。

「ずっと渡したかったんだ」

ハクは少し驚いた後、優しく微笑んだ。

「じゃあ、お返しはホワイトデーに俺が届けるよ」

こうして、海を越えたバレンタインの想いが実ったのだった。


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てみ
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