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錬成は電卓の親族 #毎週ショートショートnote
その電卓は、石田家に伝わる電卓だった。代々、石田家に伝承された、その電卓は修練され、磨き鍛えられた電卓なのだ。
どういうモノかというと、電卓に数字を指で押すと、電卓自身が答えるのだ。
しかも、その数字が出た理由まで述べることが出来て、大変ためになる。
だが、一方で、話が長すぎて、ほんの少しだけ使いたい時などは、説明が長すぎて困ることもあるのだが。
だが、伝承して来た石田家にとって、
この電卓は家宝も同じ。大切に大切に使ってこそのモノなので、電卓は、一番の知恵者として石田家に君臨していた。
修練、磨き鍛えられた電卓は、だんだん、自我に目覚め、計算以外の事柄にも口を出すようになった。
コレには石田家の誰もが閉口したのだが、電卓は聞かない振りをすると怒り出すようになってしまい、人間より賢い電卓だと自分を鼓舞し、『神棚にあげよ』と言うようになった。
親族たちは、電卓に聞こえない場所に行き、これからのことを話しあった。
そして、電池を取り出すことに決めてしまった。
磨き鍛えられた電卓は、今や、その力を失くされ、いつしか埃をかぶる存在になり、石田家にも忘れられてしまった。何のための電卓なのだろう。哀れな電卓の末路だった。
それと同時に、石田家は、どんどん衰退していき、年寄りだけが住む家となってしまった。
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