見出し画像

ぼくはくま/青ブラ文学部

くまのぼくは、この家のサトルくんと仲良しなんだ。ぼくをいつも抱いててくれるし、寝る時も一緒。
サトルくんの隣に寝てるんだよ。
サトルくんが小さい声で
「おやすみ」を言うから、
ぼくも心の中で「おやすみ」と言うんだ。
実はサトルくんが寝ている間は、ぼくは起きてるんだよ。
ぼくはぬいぐるみだから、寝ることが無いんだ。だから、サトルくんが寝ている時は、サトルくんの寝息を聞いて、過ごしてる。他にもぬいぐるみは、あるけど話したことは無いよ。
ぼくはサトルくんのいちばんのお気に入りだと思ってる。だって、いつも一緒なんだもん。お母さんは、サトルくんが泣くと、ぼくをサトルくんに渡すんだ。
そうするとサトルくんは泣き止むんだよ。
ネ、ぼくはサトルくんのお気に入りでしょ。

ある日のこと、サトルくんは背中にカバンを背負ったんだ。カッコいいかばんだったよ。キラキラしてた。
それからは、毎日カバンを背負って学校というところに出かけてた。
ぼくは家で留守番さ。
最初のうちは、サトルくんはカバンを置くと、ぼくを抱っこしてくれたけど、もう一緒に寝ることは無かった。ぼくは寂しかったけど、サトルくんは大きくなったから、ぼくはいらなくなったんだと思う。ぼくの居場所は、サトルくんの机の隣にある他のぬいぐるみたちと一緒の場所になった。
「いいんだ。サトルくんが決めたことだから」

少しの間だけ、サトルくんと一緒に寝ることが出来たぼくは幸せだよ。

それから、時々、お母さんがぼくを抱っこして撫でてくれるんだ。お母さんは、サトル君が大きくなってぼくが寂しいと思ってくれたのかなぁ。それとも、サトルくんが大きくなって、お母さんも少しだけ寂しかったのかもしれない。


サトルくんは家を出て遠くに行くことが決まった。ぼくは留守番だよ。
ずっと同じ場所に置かれている。
大人になったサトルくんは見違えるほど大きくなったよ。
いつだったか、突然、ぼくの鼻をポンと触ったんだ。
すごくすごく嬉しかった。
ぼくはずっとサトルくんを好きでいようと思った。大人になったサトルくんも大好きなんだ。


3日目

いいなと思ったら応援しよう!

てみ
いつもありがとうございます。よろしければ応援をお願いします。これからも分かりやすい記事の投稿に努めてまいります。