秘密/ボケ学会
じいさまの遺言は、ひと言。
「秘密は墓まで持っていく」
であった。
これには、一族が大慌て。
一族というのは、
じいさまの妻
それに、長男、長女、次女
長男には、妻、子どもが2人
長女には、夫、子どもは無い
次女は、未婚。
遺言を託されたじいさまの親友
弁護士の佐藤は、困っていた。
誰もが遺産はどうなるのか
気になっていたからだ。
「遺産なんてありませんよ」
じいさまの妻が皆をたしなめるように、言った。
「この家は?土地は?じいさまの収集していた骨董品は?」
長男が口を出す。
「だから、何も無いのです」
「そんなバカな」
弁護士の佐藤が口を開いて語る。
「じいさまは、死ぬ前に、この家、土地、骨董品、すべて売却されたんです。ですので、奥様の言う通りでございます」
「じいさまは、なんでそんなことを」
誰もが気になってしまう。
弁護士の佐藤は、額に汗をかき、
それでも、言った方がいいのか悩んでいた。
「佐藤さん、言っておやりなさい、
真実を」
「じいさまの遺言を思い出してください。秘密は墓まで持っていく
この本当の意味を、お話します」
皆、身を乗り出して聞く。
「じいさまには愛人が15人おりました。その方たちの手切金といいますか、慰謝料といいますか、あの、それで愛人関係を終了させた訳です。そして、15人の方々に平等に分けようとしましたら、遺産の全額が、ピッタリコンであったわけです」
「もう、じいさまは、墓に入ったのだから秘密を公にしたのですよ」
皆は空いた口が塞がらない。
次女が席を立った。
続いて、長女夫婦、
最後に残った長男一家。
「ばあちゃん、これからどうするんだ、この家にも住めなくなるんだろう。家に来るか?」
そう言った途端、長男の妻が長男の足を思い切り、つねった。
「いてて、何するんだ」
「いいからあなたは黙って」
「夫婦で喧嘩せんでええ。私は行く所が決まっているから、安心せい」
じいさまの妻は頬を赤くそめて
「佐藤さんと、一緒になるんじゃ」
「奥様、まだそれは秘密で.....」
弁護士の佐藤の汗は吹き出し
顔は汗だくだった。
「なあに、言うとるかね。秘密なんちゅうもんはバレてなんぼだがね。
おほほほほ......」