ZOZOのマーケティングトレース②財務分析とマーケティング施策
初#マーケティングトレース になります!
前回は、ZOZOのビジネスモデルをみた部分が大きかったのですが、今回は本格的にマーケティングトレースしていきたいと思います。
ZOZOの財務状況を読み解く
ひとまず、PL・BS・CFを図解してみました。
荷造運搬費:事業モデルとしてZOZOTOWNが販売の他に管理や運送まで担うので、コストとして膨らむのは納得がいきます。売上高の20%が荷造運搬費で占める(75%×27%)占めるように平準化されているようです。
業務委託費:こちらは「プライベートブランドにかかる業務委託費」及び「物流拠点増加に伴う庫内オペレーションにかかる業務委託費」に大別されるようです。PB事業に関しては、「ZOZOSUIT」は廃止方針で、今後は身長、体重、年代、性別のみでユーザー個人の体型に合わせた、自社企画アパレル商品を販売することになります。従来のUネックTシャツ、テーパードデニム、ジップパーカーやチノパンツをはじめとした合計20アイテムのローンチをしていて、ビジネススーツなど一部のフォーマルラインのアイテムを除くすべての商品を上記の新計測手法により購入可能にする方針です。
一方で、新しいPBの発表(2019/6/24)もありました。
ゾゾマットは撮影時足を載せる専用マットとアプリによって計測し、足長や足幅、足囲といった足の複数箇所のサイズをミリ単位で計測が可能。3Dデータはアプリ内で確認できるものです。現在先行予約を受け付けており、2019年秋冬に順次発送する予定。すでに初日に20万件を超える注文があり、今後もPB事業を伸ばしていく方針にあるのが伺えます。
代金回収手数料:これはZOZOTOWNの「ツケ払い」に関わる費用のことですが、本質的には債権譲渡先のGMOペイメントサービスの「GMO後払い」サービスにあたります。二ヶ月後まで支払い期限は伸びますが、「ツケ払い」手数料と、振込手数料が別途かかります。
前年度より営業CFが落ちているのが気になりますが、投資と返済に回しているのが伺えます。投資活動としては、つくば市の新物流センターの稼働(習志野市、印西市にもあり、物流センターとしては3つめ)をはじめ、財務活動としては短期借り入れと自社株式取得によるものです。
ZOZOのマーケティングトレース
...長くなりましたが、やっとマーケーティングトレースになります。初めてだったものの、もうすこし次回からはスリムアップします。
ZOZOの現状、課題感
有価証券とニュースリリースから、ZOZOの抱える課題感をまず整理してみます。
①出店ブランドへの信頼回復→(1)ZOZOTOWN出店企業の自社EC運営のためのフルフィルメント支援サービス「Fulfillment by ZOZO」の開始(2)ブランドと協働でMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業の開始
...「出店ブランドへの信頼回復?」と思うのですが、これは「ZOZOARIGATOメンバーシップ」サービスに関わるものです。
ゾゾアリガトーとは、年額3,000円もしくは月額500円(いずれも税別)のプランを選ぶと、商品購入時の金額から「ARIGATO割」として10%が常時割引されるほか、セールへの先行入場のサービスを受けることができる有料会員サービスです。しかし、これは自社のEC事業での売上を伸ばそうとしているブランド側からにとって、ZOZOでは常に10%オフで安く売られてしまうため、自社サイトで売れなくなるばかりか、“常時割引のある”廉価イメージがつきブランド毀損に繋がってしまいます。2019年5月30日にすでに終了したサービスではあるのですが、オンワードやミキハウス、ライトオンなどの企業がゾゾタウンでの販売を停止しました。
つまり、ユーザー目線では魅力的なサービスだったが、ブランド出店側には何のメリットも感じられないサービスだったため、ブランド出店側にとって利益となる施策を打つ必要がでてきた、訳です。そこで、(1)(2)の施策を打ち出したのでした。
(1)は、ZOZOがブランド側自社ECサイト運営サポートするサービスを開始するということです。ブランドからは配送料、出荷代行手数料を受け取りますが、物流倉庫においてブランドのZOZOTOWNの在庫、ブランド側自社ECの在庫を共通化でき、在庫量が増加することから、ZOZOTOWNにおける在庫不足による機会損失を防ぐ、という目的のもと行われます。自社ECサイト運営手数料を15%無料化します(おそらく、約30%とみられる受託販売手数料のうち15%分が無料化。)。新しく稼働をはじめたつくば市の物流センターもあり、さらに2019年秋、及び2020年春にそれぞれ物流倉庫を増やす予定もあり、今後もスケールメリットにより販管費の27%を握る荷造運搬費削減は積極的に求めていくと考えられます。
(2)のMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業とは、ブランドのアイテムをマルチサイズ(自由なサイズ)で販売する新たなサービスです。
現在、ストライプインターナショナルやベイクルーズグループ、パルグループ、ビームス、マークスタイラーなどの参画が決定しており、アイテムは20〜50サイズを用意する。発売は今秋を予定しています。
②ZOZOTOWNにおける取扱アイテム、ブランドの拡充
これは当然の戦略だと思います。①にあげた自社EC運営のためのフルフィルメント支援サービス「Fulfillment by ZOZO」により、新たに委託企業は増えると考えられます。
③海外進出(中国)
PB事業についてはZOZO Germany GmbH及びZOZO Apparel USA,
Inc.は海外事業から撤退することが決定しています。一方で、ZOZOは2011年10月に中国向けのECサイトを展開し2013年1月にクローズしていたのですが、今年中国に再進出します。中国への販売市場拡大を希望するすべてのZOZOTOWN出店ショップを対象に、ZOZOTOWNで販売中の商品を中国の消費者に向けても販売可能にする、「越境EC」として展開します。参加ショップは、日本でのZOZOTOWN出店時と同率の販売代行手数料のまま、販売市場を拡大することができます。
ここまでの施策をまとめると、
新規戦略:①新PB事業の「ZOZOMAT」②自社EC向けフルフィルメント支援サービス「Fulfillment by ZOZO」③MSP事業④中国再進出
既存戦略:①物流センター・システムの拡充②取り扱いブランド数の拡充
以上がZOZOが公に出している情報となります。
わたしがCMOだったら
国内でのZOZOTOWN利用率増加のために、月額4000円で月11点までのブランド服レンタル事業を提案します。
まず現在のユーザーについてですが、
基本的に、20後半〜30代前半の女性がメインターゲットであり、意外と18〜24歳の女性と男性全般を取りきれていないことがわかります。ただ、この領域はファストファッションを志向する層が厚く、顧客単価を考えても受託販売型の事業モデルをもつZOZOには手を出しにくい領域であると思います。
そこで、顧客単価を変えずにこのファストファッション志向層をとるにはどうすれば良いか、考えたのがブランド服レンタル事業です。ZOZOのアクティブユーザー一人当たりの年間購入金額は46000円・購入点数は11点なので、月額4000円で月10点までのブランド服レンタル事業を提案したいと思います。「月次で新しいブランドの上下5セットが届き、買えばいいのは靴下とパンツだけ。」というのは、タンスも小さく済みますし個人的にとても便利だと感じます。
ただ、洋服のレンタルシェアで有名なairClosetさんでも月に10000円程するので、正直月額4000円はクリーニング代を含めて考えると課題感はあります。
...「え。
CMOなら、他になにか考えられないの?」という声が聞こえてきそうなので、もうすこし考えてみます。笑
①ブランドシューズ/高品質コスプレ・浴衣のレンタル業
靴は衣服よりクリーニングが楽でかつ、耐久性も高く、単価も高いためレンタルに向いている。ZOZOMATのノウハウを活かせる。コスプレ・浴衣は、体型データがより求められるし、かつ常用するものではないのでよりレンタルに向いており、単価も高いため。
②体型データ→頭形スキャン髪型サジェスト→美容室選びもWEARで!
衣服の第一印象って、わりと髪型とまゆの形で決まるのでは?
③ZOZOSUITのAR化
これまでのデータを生かしデジタル上で試着することができるようになることで、新しい試着体験を生み出す。
④リアル店舗との提携
ZOZOSUITを契約ブランド先のリアル店舗で用意しておき、誰もがそこで試着することができ、そのデータをもとに現品をその場で確認。ZOZOTOWNで購入し、後日配達。ブランド先店舗も無人化することができ、ユーザーとしてもセールストークを受けずにこれまで入りずらかったブランド店に入りやすくなる。
...等々を考えてみました。アイデアベースのイメージが強いので、これからもう少し精度をあげていきたいと思います。CMOってすごいや...
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
最後まで読んでいただきありがとうございます!わたしの心の栄養はスキボタンです ぜひお気軽に話しかけてください ツイッター@telltotell20 です!