【目下 製作中!】”手仕事始め” は 鍛冶屋さんごっこから
今年の ” 手仕事始め ” は、旧年中の怪我(ムチウチ:12月下旬に治療を終了)もあって、本業と一緒に1月4日からとしました。
従前であれば、元日から暇を持て余してアトリエに籠るのが定番なのですが、今年の正月三が日は大人しくすることにしたのです。
とにもかくにも、” がっつかない ” という感じですかね。
こうやって落ち着いた時間を過ごしてみると、これまでの自分がいかに前のめりになっていたということが分かろうものです。
1:自ら道具を造る とは?
根付に限らず、何を作るにしても、描くにしても、自分にとって最良の道具が見つからなければ、自ら道具を造ることなるわけです。
まぁ、こんな便利な世の中になっていながらも、道具を自分で作らなければならなくなるって、普通に考えたら異常事態なのかもしれません。
でも、製作の現場では ” 普通に起こり得ること ” だったりします。
例えば、昔から自分で道具を造ることが当たり前だった (根付の場合はこれ) とか、市販の道具はあるけれど、高価で買えないとか、希少過ぎて手に入らないとか、案外そういうケースは多いんですよね。
で、やむなく道具を造ることなるわけですが、それはそれで想像以上に充実した時間が過ごせるのです。
端的に言えば、新しい知見を得られると。
それは何故か?
そう、失敗をするから(笑)。
それは冗談(殆ど本当だけど)にしても、門外の分野に突入せねばならなくなる場合も少なくないので、結果として勉強になるのです。
それも、かなり実学的な奴ですね。
僕は凡人だから、その回り道を楽しむ様に心掛けてます。
でないと、異常なストレスに悩まされることになるので … 。(若い時分はその悪いサイクルにはまってました。)
こうした考え方は、昨今の「何でも Fast 」を指向される方にとっては、とうてい理解し難い話だと思いますが … どうなんでしょう?
おっと、観念的な話になりそうなので軌道修正します。
といったわけで、今年の ” 手仕事初め ” は、鍛冶屋さんの真似事から始まりました … という話をばさせて頂きましょう。
2:左刃を作る
手掛けたのは、左刃と呼ばれる、根付専用の彫刻刀です。
今回は、都合6本だけ製作することにしました。
マテリアルについては、本稿で語る必要はないでしょう。大雑把に言えば、研いだら刃物になる鋼を使っているということです。
それらを、熱して、潰して、曲げて、削って、成形して、研いで … という工程を経て左刃に仕上げていくのです。
製作途上の形状を見れば分かる通り、こんな奇天烈な刃物が市販されているわけもないと(笑)。そもそも、需要がないし。
根付を作ってきた、若しくは、作っている名人上手の多くが、自分で左刃を造ってきたと聞いています。
僕が敬愛してやまない先達の 藻己 は、200本以上の左刃を駆使して作品を作っていたと言うから驚きです。
※藻己については下記リンク先をどうぞ。
江戸〜明治の頃であれば、野鍛冶に注文するという方法もあったと思いますが、自分の細かいこだわりやニュアンスを伝えるのは難しかったと思うし、そもそも刃物鋼が身近にあった時代だからこそ、比較的容易に自作できたのだと推測しています。(特に、内職で根付を作っていた武士であれば、至極容易な行為だったはず。)
さてと、妄想にも似た想像はここまでにしましょう。
これで完成ではありませんから(微笑)。
何はともあれ、これから暫くの間、先端を削って研いで …… を繰り返すことになりそうです。
そして、使ってみて拙ければ …… 作り直すと。
この果てしなき遠回り感が堪りません(強がり)。
そんなこんなの ” 手仕事初め ” を済ませた翌1月5日。
早々にやらかしてしまいました(泣笑)。
3:元の木阿弥 結局は がっついた
手元不如意は突然に起きました。
彫刻刀でザクっと!
よりによって、関節部分に刃先がいっちゃいました。
しかも、かなり深かったので、さすがにヤバいかなぁと。
ままある切傷レベルの怪我で病院のお世話になることは無いのですが、此度は関節だったので、独自の民間療法?!に頼らず、現代医学の恩恵を賜ることにしました。
その判断が正解だったのは言うまでもありません。
当人が思っているよりも事は重大で、レントゲンまで撮られました。
ドクター曰く「こういう部位の怪我はね、骨に傷が入っているとややこしくなるんだよ。骨髄にばい菌が侵入して感染症に罹ることが拙いからね。」とのこと(戦々恐々)。
くわばら、くわばら、たかが切り傷とは侮れませんな。
とまれ、結果は問題なし。
自ら施した応急処置を褒められたくらいにして、感染予防の抗生物質と軟膏を頂戴して帰宅しました。
それにしても、この怪我 … 。
振り返ってみれば、やっぱり無理をしたんですよね。
隙間の時間に詰め込み過ぎたのです。
エラーには必ず原因が存在するということですね。
別な捉え方をすれば、ハインリッヒの法則に準じていたのかもしれません。(気付かないうちに、似たような失策を重ねていたのでしょう。)
「もう少し自重しなければなぁ …。」 と一頻り猛省。冒頭で綴った「がっつかない」というセリフに失笑を禁じ得ませんな(恥笑)。
そんな、反省の多い ” 手仕事初め ” となりました。
新年早々、良薬(苦い薬)を処方してもらったと思って、今後に活かして参りましょう。
お後がよろしいようです(低頭)。