イカそうめんが好きな理由
「めんこいのぉ~、本当にめんこいこと」
子どもだった私に向けた
親戚の叔父さんの独り言のような言葉と
温かい眼差しを時々思い出す。
私は小さな食卓に出された
目の前のイカそうめんと
冷えたサイダーにしか興味なく
その時は叔父さんの言葉を
心地よいBGMのように聞き流していた。
北の離島に住む
叔父さん夫婦には
子どもがいなかった。
裕福でなかったけれど
何年ぶりかに訪れた
私たち家族を、
精一杯もてなしてくれたことは
子どもの私にも理解できた。
だからなのか
叔父さんの「めんこいのぉ~」が
今も耳に残り、私の心を温かくする
目の前のイカを無言で口に運ぶ
愛想のない子どもであった私に
何ができても、できなくても
生きて存在しているだけでいいんだよ。
そんな、大きな愛で包んでくれたような気がして。
だから、今もイカそうめんを無性に食べたくなるのは
叔父さんの愛を思い出したい時なのかもしれない。