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老害の外食

出稼ぎに来てんだけど、今年はホテル代がばかに高くなってたから、食費を抑えようと、滅多にいかないサイゼなんかに入った。そしたら、やっぱりセルフ注文になってて、嫌な予感はしてたんだが、QRコードの読み方がわからんで店員さんにえらい迷惑をかけた。前に娘と出かけたときに、別の店でやったことあったんだけど、普段使わないからもう忘れてた。

まあ、ハイテクだから仕方ないやと思って、今度はドリンクバーのローテク機械でボタン押して飲み物が注がれるのを待ってたら、後ろにいたお嬢さんに「それ押し続けないと出ないですよ」って教えられた。

で、支払いになって、どうせまたハイテクで自分のスマホで払うんだろうなって探したんだけど、どこで払うかわからない。聞いたらやっぱりレジで払うらしい。で、レジには妙にローテクな機械が置いてあって現金しか受け付けない。現金の持ち合わせがない自分が戸惑ってたら、すぐに店員さんが出てきて助けてくれた。

こんな老害のオレでも、店員さんはイヤな顔ひとつせずに親切に応対してくれるのには感心させられた。注文の仕方もドリンクバーの使い方も覚えたし、また来てもいいなって思わせてくれた。まあ、仕事向けにイケオジ・モードだったからかもしれん。普段のキモオタ・モードだったらこういうわけにはいかんかったかもな。

すぐ隣のテーブルで高校生くらいの二人がデートしてて、なに話してんのか聞くともなしに聞いてたんだけど、実のあることなんか何ひとつ言ってない。女の子が退屈してないか心配である。で、そうしてるうちに、その男の子がずるずるって大きな音立ててパスタすすり始めるから、見てるほうが冷や冷やした。なのに、二人とも幸せそうにパスタ分け合って出てった。

そういえば、好き合ってるときは、どんな会話するかとか何をどう食うかなんてどうでもよかったよな。冬の公園で缶コーヒーとタバコ(今の半分くらいの値段だった)で何時間でも一緒にいられた。大した話なんかしなくても。そんなことも思い出させられて、なんだか懐かしい気分になった。

でも、自分はレストランに入るとフルコースでデザートまでいただかないと気がすまない人間だから、なんの節約にもならんかったわ。


コーヒー一杯ごちそうしてくれれば、生きていく糧になりそうな話をしてくれる。そういう人間にわたしはなりたい。とくにコーヒー飲みたくなったときには。