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イベント・お出かけメモ#31「小川晴陽と飛鳥園 100年の旅」(パラミタミュージアム)

写真家である小川晴陽が創立し、2022年に創立100年を迎えた仏像撮影専門の写真館「飛鳥園」を紹介する特別展示がパラミタミュージアムで開催されたので、足を運んでみた。

信仰の対象でもあり、近代以降は美術品としても評価されるようになって久しい仏像たちを拝見することは大好きで、年に数回訪れる奈良国立博物館では、旧館(なら仏像館)にも足を運んで、なじみのある仏像たちを堪能してから帰宅する。また、仏像が登場する企画展も行く他、お寺にも足を運ぶ。
昨今は展示品のライトアップが格段に工夫されるようになっており、美術館・博物館のケースの中、あるいはケースには入っていない状態で展示されている仏像の表情や裳裾などの細部の技巧も見やすくなっている。ただ、それでも仏像たちの本来ある場所は、線香の香が沁みついた、薄暗いお寺の中の建物で有って、そういうところへ行って他の善男善女の人達と一緒に参拝しつつ仏様を拝見する方がしっくりくることは言うまでもない。

写真は光と影の芸術だと、どこかで見たことがある。撮影対象の魅力を最大限表現したり、あるいは撮影者の意図を明確にするために、ライティングは大きな影響を持つ要素であるし、また、どの角度から撮影するかということは、固定した表情に見えて実は見る角度によって表情を変える能面や仏像にとってはとても大事なことだと思う。

その意味において、仏像撮影専門の「飛鳥園」に関わる人達が撮影した写真をある程度まとめてみることが出来る機会は、とても楽しかった。

また、阿修羅に少年・少女性を見てしまうことについて、撮影の角度の影響を自覚、反省し、下からではなくやや上から撮影することによって、阿修羅像の新たな表情および魅力を引き出した写真などがあって大変良かった。

奈良国立博物館で2022年に特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ―三輪山信仰のみほとけ」があり、その際にその静かな美しさに圧倒された聖林寺の十一面観音像については、全体像だけではなく、手や蓮弁だけの写真も演じされており、確かに、仏像は全体像、お顔、手や持物、光背、そして裳裾の表現といった、全体としてもパーツそれ自体としても魅力を持っていることを再認識した。

また、今回の企画展では、東大寺や聖林寺といった奈良を代表するお寺に縁のある仏像だけではなく、中国の雲崗石窟、韓国の石窟庵、仏国寺、インドネシアのボロブドゥール遺跡などの写真やスケッチなどの展示もあった。特に雲崗石窟の一角が迫力があってよかった。中国や韓国の仏像撮影は、当時その一帯を日本軍が管轄していたことで実現されており、東アジアの仏像と日本軍および占領者としての日本人のことを連想すると胸が痛くなることはもちろんあるが、他方においてその当時の歴史資料としても重要なものだと思った。

仏像撮影などはやはり女人禁制の伝統とまではいわないが女性は忌避される傾向にあるのではないか、女性の仏像専門写真家はいるのだろうか、などとふと思ったが、過去においては難しくても、これからは登場してくるのではないかと思う。記録・保存されるべきものであり、芸術・美術品でもあるとともに、信仰の対象でもあることを忘れずに、今後も芸術としての仏像写真を楽しみたいと思う。

なお、2階の特別展が写真であることに配慮したのか、1階は「雪月花のこころ―大観・玉堂・龍子三幅対を中心に」とする企画で、横山大観・川合玉堂・川端龍子を中心とする日本画が展示されていた他、新年向けの前田青邨「紅白梅」「富士」なども見ることができた。

前にも書いたことがあるが、パラミタミュージアムは中庭散策も楽しめる美術館で、特に冬場は蚊などの虫に煩わされることもないため、散策には最適だと思う。

中庭の奥にある仏像


中庭からサロン方面