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イベント・お出かけメモ#33「パウル・クレー展-創造をめぐる星座」(於 愛知県美術館)と日展東海展
楽しみにしていたクレー展へ行ってきました。
クレーの絵は、Cat and Birdといった暖かな配色の不思議な絵や、そこか寂しい天使の絵(忘れっぽい天使などの晩年の絵画)が好きなのですが、事前に入手していたチラシを見る限りは暗色系の作品が多く、天使は来てくれない点が少し残念に思っていました。
それでも、クレーの絵画をある程度まとまった形で見ることができること、そして、彼の交友関係などを知ることができそうなので、そのあたりを楽しみにして行きました。
私はクレーは活動の後半の作品を主に見てきたようで、クレーがスタート地点では色より線の画家であったことを初めて知りました。また、青騎士展というグループでの交流、モロッコ旅行(近い異国としてのアフリカ諸国がヨーロッパの芸術家に与えた影響などは今後も考えていきたいと思います)の影響やその旅行を一緒に楽しんだ友人との関係、そしてその友人たちが第一次世界大戦に従軍して死亡してしまうことを含む戦争が作品に与えた影響などを理解することができた点が新鮮でした。
もちろん、クレーはナチスドイツによって退廃芸術展に作品が展示されるなどの苦痛を与えられてスイスに逃れたことなどは知っていましたが、それは晩年の天使シリーズに結びつくようなイメージを持っていただけだったので、もっと早い段階から戦争やそれによる社会問題などにも関心をもっていたことは改めて認識しました。
また、バウハウスで教鞭をとる前の段階から、油彩転写などの技法への挑戦や計算された構図などへの取り組みを精力的に行い、作品が変化していく様子も楽しく見ました。
企画展のチラシのメインに選ばれていた「赤、黄、青、白、黒の長方形によるハーモニー」(1923)はバウハウス時代の作品、そして「殉教者の頭部」(1933)はそれより後の時代の作品でした。ガーゼや石膏下地を用いた「殉教者の頭部」もそうですが、クレーの作品は、「え?」と思うような素材が使われていて、これは画集ではよくわからなかったという点で新鮮でした。
ひとつの作品の中にある様々な色、もしくはハーモニー、そしてそこで存在感を持つ線、あるいは天使シリーズは、今回の企画展では来てくれていませんでしたが、クレーと交流があった当時の画家(カンディンスキー、キリコ、ミロ、エルンストなど)の作品も一緒に見ることが出来たので楽しかったです。
さて、今回、ミュージアムグッズの事前情報をチェックした段階で、購入して帰ろうと思ったのは、企画展の副題にある「星座」に関する傘や缶入りビスケット、マグネットにパタパタメモでしたが、実際に購入したのは、会場限定のトートバッグ、飴入りポーチ、ノート+マグネットとパタパタメモでした。ノートは大好きな天使があったのでそれと悩んだのですが、どうでもいい私のこだわりとして見た作品のものを持ち帰りたいというものがあり、「蛾の踊り」にしました。
傘と缶の意匠はとても素敵だったのですが、特に前者の傘は、ベースが黒なので、この傘だと車の運転手がきちんと認知してくれなくて事故に遭うかも、といった妙なことが気になってしまって断念しました。ただ、クレーの交友関係を星座になぞらえたデザインで、「やっぱり買うべき?」とかなり悩みました。
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ミュージアムショップでは、(トート)バッグかTシャツ、マグネット、文具関係、家人や知人へのお土産になるようなちょっとしたお菓子類などを買うのが好きです。図録は今回の企画展に関する情報がぎゅっと詰まっているので読みごたえがあって好きなのですが、私の部屋の本棚スペース的にちょっと置いておくのが無理なので、最近は1年で1冊位の購入に留めています。もうちょっと薄めの学芸員の語りをメインにした冊子もしくは一般的なハードカバーレベルのサイズの本があると嬉しいなと思いました。
クレー展は10階で開催されていましたが、そのついでに8階で開催されていた日展(東海展)にも足を運びました。
日展は、作品が大きいので、見ごたえがあるのと、なんらかのテーマにまとめることができないごちゃ混ぜ感が楽しいのと、そして数年通うと常連さんがわかってくるので、「今年の作品は何かな」といった新作拝見というような喜びがあって、出来る限り足を運ぶようにしています。
昨年ぐらいから写真撮影、SNS(投稿の際には作品名などのクレジット記載という条件)も割とOKな作品が増えてきました。ことしは楽器をもった女性の絵がちょっと多いなという印象を受けました。
ちなみに日展の絵画作品などを鑑賞するときの私のモードは「(仮に)自分が本を出すとしたら、どの人に表紙を依頼しようか」といった非常に妙なものです。そういったことから、割と主張が強すぎない、絵にストーリ―があるかあるいは静かな作品が好きみたいです。今回は、稲田雅士「静かな夜に」、佐藤和歌子「ソロモンの指輪」、熊谷有展「アムステルダム」、朝成田禎介「渓谷」などが良かったです。
彫刻は、大き目の部屋にずらっと作品が並んでいるので毎年圧倒されるのですが、やはりやわらかなものを表現している作品(酒井華「テディベア」)が素敵でした。はいってすぐのところにある鈴木紹陶武「ランウェイⅡ 秋の宝石」は、猫と暮らした人ならわかる、猫と目があった一瞬みたいな猫の表情や身体の表現が良かったです。異色な作品としては、井上智「はなびら」。髪の毛を表現しているところや、お尻のあたりの木目がきれいで、すさまじい技術を持った人だなと思いました。
私に教養や感性が不足しているので、工芸と字はちょっとその評価ポイントがわからないのですが、それでも入選を目指して頑張ることは楽しいだろうなと思いました。
愛知県美術館、ギャラリー、そしてそれらが入っている建物はそれ自体が綺麗です。
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こういった足を運ぶだけでも気分がさわやか
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になる文化施設を今後も守っていって欲しいですし、そのためにも(いいわけですが)美術館などには行きたいと思った時には少し無理をしてでもしっかり足を運ぼうと思いました。