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#46 こんなことがあった(綺麗なチャーハン)
札幌の社宅に居た時の話。
社宅は夫の職位がほぼ同じで家族構成なども割と似ている感じだった。
それはそれで気持ちが悪いところもあるけれど、着なくなった服のやりとりや夫不在でどこかに出かける時に一緒に行動できるといった点では便利なところもあった。用事がある時に子どもを預け合うということもしていた。
その中で、札幌の2番目の社宅で、母がよくお邪魔していた家でつくってもらったチャーハンのことをよく覚えている。フライパンを使っていたのでチャーハンで合っていると思うが、もしかしたらピラフに近かったのかもしれない。中華料理屋で食べることができるパラパラチャーハン(あれは美味しい)とは異なった、もう少し水分が多くてつやつやしている感じだった。
私の母は短大で栄養士などの資格を取得しており、食べることと栄養にはそこそこうるさい方ではあったが、多分、料理は好きじゃなかったのだと思う。キャベツの千切りをはじめとする包丁遣いは上手いのだが、「食べたら一緒」が口癖だったことからおわかりいただけると思うが、味と盛り付けに問題があった。だから残り物野菜一掃料理としてのカレーは煮込んだら終わりなのでどうにかなるものの、チャーハンになると、ご飯はベタっ、野菜は大きすぎると言う感じで、出された料理についてはお腹に入ればたいていOKという私ではあったが、なんとなく残念なチャーハンだったのだ。
その家で一度だけ出してもらったチャーハンは、全ての具が小さ目に切りそろえられていて見た目にとても美しかったし、ご飯も焦げてはおらず、また、バターが多めに使われている味がした(なのでもしかしたらピラフだったのかもしれない)。こういう料理が普通に出てくる家って素敵だな、こういうチャーハンが食べたいなと思って、ただし食事を作ってもらっている身なので母には言えなかったことを覚えている。
あり合わせの野菜で作ったはずなのに、洒落ていて綺麗で美味しかったそのチャーハンを作ってくれた人は今何をしているのだろう。社宅の母の知人も何人かは既に亡くなってきているので、知りたいような、知りたくないようなそんなことを思っている。