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まだ君から醒めない

「それでいいの」
良くないのにそう言って、泣いた。

これは夢の記憶、夢の記録。

夢の中の私は何処からか逃げ出して
動く荷台の上に居たような気がする。

そこで何故か君の隣に居て、何故か私は幸せで
君は嫌そうな顔をするけど、満更でも無さそう。

ガタガタと進む荷台の上で
2人横になっていた。

このまま連れ出して欲しいよ
ずっと一緒にいて欲しい。

君がそんなことに見合った男じゃないって
ずっと昔から分かっているのに、
そう思いながら泣くのをやめられない。

涙が沢山溢れてくる私に
絶対に「泣くな」って言わないから
私はずっと泣いている。
少し乱暴に扱われても、話が噛み合わなくても
私が君を求めている。

「彼氏に怒られるぞ」って言ってくる。
「分かってるよ」って笑いながら泣いてる。

もう夢の中でも君と私は付き合ってないんだね。
よかった。
それなのに、私はこんなに悲しむんだね。

怒られる時は一緒に居てやんないからなって
釘を刺されている。
面倒臭いものを相手にしてる顔をしている。

それでも泣いてる私の肩に腕を回して、
私が自分のものだって素振りはするんだね。

この時間が終わったら、
私はこっぴどく怒られるよ。
夢の中の君は、
誰にも責められないで飄々としている。

そしてまた、気まぐれに私の夢に出てきて
優しくしたり素っ気なくしたり
私に大好きって気持ちだけ与えて
目が覚めた時には何もかも奪っていくんだ。

全部分かってて、泣いた。
荷台から降りたら、もう会えない。
夢から醒めたら、もう会えない。
この悲しみも、無かったことになる。

朝が来る、無責任な夢が終わって
責任だらけの世界が始まる。
継続的な幸せと、それを守るための日々が。

起きてしまえば、君は居ない。
頭の中にも、君は居ない。
どうして夢に見たのか分からない程、
君との記憶は遠い場所にある。

目が覚めた私はげんなりとして、
まだ君に醒めない私が居るのに幻滅する。

180度別人の私で、今日が始まる。
もう会いに来ないでね、また、会いに来てね。

これはただの夢の記憶。

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