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【ミステリ多め】2021年上半期に読んで特に良かった本5冊を雑に発表しておく

2021年上半期も面白い本をたくさん読んだ。
そのなかで、特に良く感じた本5冊を紹介する。

◆羽生飛鳥『蝶として死す 平家物語推理抄』

日本の歴史ミステリには苦手意識があったが、この本を読んだらあんまり嫌じゃなくなった。推理の組み立て方がたいへん丁寧だし、現代の法医学を違和感なく溶け込ませる手法が超見事。現代風の押しつけがましい義理人情や説教くささも無く、武士のドライな視点で物語が進んでいくのも良い。

◆アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳『カササギ殺人事件』(上)、(下)

ただのミステリではない。
この本を読むと宇宙の誕生を目撃できる。
いまはそれしか言えない。

◆小林多喜二『蟹工船』

正直に言うと、仕事に不満があったので読んだ。
みんなで鬼畜の監督を殴りに行く場面で「よっしゃ、いてまえ!」と拳を握ったが、突然「かつてはその人の前に跪いたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を載させようとするのです」という言葉が頭の奥から湧き上がってきて、すごくすごく哀しくなった。すべての働く人はきっと共感不可避。

◆アダム・オファロン・プライス著、青木純子訳『ホテル・ネヴァーシンク』

ポケミスはハズレがなくて最高。
次々と語り手が変わり、ゆっくりとホテルの秘密が明らかになっていく様が、ゲーム「フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと」みたいで好きだった。文章は淡々としていて灰色で、曇り空の日に公園のベンチに座って、道行く人々の人生を眺めているような気分になる。映画にしても映えそう。

◆宮部みゆき『火車』

数少ない友だちが貸してくれた。
ガチガチのミステリに慣れ切っていたので、最初はホワッとした展開が物足りなく感じた。しかし、読み進めていくうちに「私の向き合い方が間違っていた」と反省。苦しむ人を「自己責任」と嗤い、足蹴にする風潮がある現代において、本当に読んで良かったと思える本だった。友だちが貸してくれたという嬉しさもあり、思い出に強く残っている。

◆おまけ:落語「真景累ヶ淵」

会社で「作業は怖い話を聴きながらすると捗る」なる情報をゲットし、桂歌丸さんの完全版「真景累ヶ淵」を聴いた。ただ聴いているだけなのに、血のニチャニチャした生臭さや月夜の静けさ、幽霊の醸すゾッとするような冷気など、登場人物たちが感じたであろうすべてが私にも伝わってきた。悪党が己の罪業によって身を滅ぼす話に興奮する「へき」があるので、聴いている最中はずっと変な笑いが止まらなかった。サスペンスやミステリ要素があるのも良い。同じく三遊亭圓朝作の「乳房榎」も好き。

◎文章:山﨑理香子

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