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自転車保管所のスピッツ(音楽エッセイシリーズ②)



(文責:伏見瞬)

撤去

高校生の頃、よく自転車を撤去されていた。

半年に一回くらいのペースだったと思う。自転車をちゃんとした駐輪場に止めず、駐輪してはいけないが撤去されない場所に停めて、学校に行っていた。撤去されないと思われた場所が時々撤去範囲になる。そのために、私の自転車もたびたび撤去された。
今考えれば、ちゃんとお金払って駐輪所停めろよ、迷惑だろ、という話であるが、本題はそこではない。

撤去された自転車は、隣町の管理所まで取りにいかなければならない。私は、その管理所まで行くのが好きだった。撤去されたらお金を2~3000円払わないといけないのだけど、お金を払うのを厭わないくらい、自転車を取りにいく過程が好きだった。

そのころ、スピッツのファーストアルバム『スピッツ』を繰り返し聴いていた。
最初に聞いたのは中学2年生の時。地元のCDショップで視聴できた『フェイクファー』と『花鳥風月』を皮切りに、小学生の頃から馴染みのあったスピッツにハマっていった。誰かに焦がれる気持ちやなにかを失くした感覚を、この人たちは途方もないなにかに変えている。そうした衝撃があった。過去のアルバムを聴きあさり、ほぼ最後にたどり着いたのがファーストだった。

最初は「なんかぼんやりしているな」という印象で、他のアルバムより好きではなかった。
二年たつと、このアルバムが一番好きになる。


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