一月一酒 第19回
初出:月刊ハンガリージャーナル 2006年1月号
Cabernet Franc, 2003
醸造所:Gróf Buttler Borászat
産地名:Egri borvidék
当コラム早くも3回目の登場となるワイナリーGróf Buttler社について未読の方のために第17回掲載分から一部転載したいと思います。
同社は先祖代々エゲルに住むBukolyi家により1999年に歴史的人物バトラー伯爵の名を冠して創設されました。この新しい家族経営による醸造所の目標は、古き良き伝統と最新技術の効果的な結合により、最高品質のワインを生産することにあります。
目標への第一歩を2000年に20haのブドウ畑で踏み出して後、2003年にも同規模の畑を拓きました。現在40haを超える同社所有のブドウ畑には、エゲル地区の中でも最良とされるSzarkás、Ráchegy、Kis-Eged、Nagy-Egedが含まれます。そしてそれぞれの畑にはエゲル地区に適したハンガリーとフランス原産種の厳選されたブドウが栽培されています。
ブドウ栽培の行程中、第11回(2005年3月号)で紹介したような考え得る限りの技術が用いられ、最良のブドウが生産されます。そして細心の注意を払って醸造されたワインは、最高品質のバリク樽(オーク材の新樽)にて熟成されます(転載ここまで)。
ハンガリーの市場に登場してから日の浅いGróf Buttler社については、確かに語るべき歴史はありません。しかしながら生産されたワインが同社について雄弁に語っています。つまり同社の最大の宣伝文句はいずれもが素晴らしいそのワインをおいて他にありません。今回ご紹介するのは第17回で取り上げたシャルドネと同じ2003年産のカベルネ・フランです。
凝縮された緋色のワインは、濃縮された様々な香り、サワーチェリー、プラム、チョコレート、カカオ、コーヒー、香椿(チャンチン)、そして高貴なオークなどがそれぞれ感じられ、味わいは心地良い酸味と豊かなタンニンがバランス良く口内に広がる辛口です。
見事なボディーのこのカベルネ・フランは、長期間寝かせることのできる能力を有しています。お飲みになる前にデカンターにあけて空気にさらすことにより香りが素早く和み、より良く楽しむことができるでしょう。
適温は18~19℃で、子牛肉、牛肉、羊肉、野生肉(ゲーム)などの料理やハードタイプのチーズのお供にお奨めします。
原文:Kindl Róbert
画像・訳文:高久圭二郎