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一月一酒 第23回

初出:月刊ハンガリージャーナル 2006年5月号

Villányi Kopár, 2003
醸造所:Gere Attila Pincészete
産地名:Villányi borvidék

 今月はヴィッラニの巨砲ゲレ・アッティラに再登場願いましょう。はじめに本コラム第15回をお読みでない方のために彼と彼のワイナリーについておさらいしたいと思います。
 ワイン醸造を家業とするドイツ(ザクセン)系移民の家系にありながら17年間にわたり林業を仕事とした後、夫人の実家を通じてワイン醸造家としての道に入りました。以来、身につけた最先端のブドウ栽培と醸造技術により、彼のワイナリーは世界に通用するレベルに達しています。その醸造規模は各ワインの個性を育むオーク材の新樽(バリク)800本という数から想像していただけると思います。最高級のメドックに匹敵する高品質ワインの秘密は、間引きにより1株あたり6~7房のブドウを収穫することにあります。彼のワインが高い評価を受ける理由の一つが、こうした堅実な仕事に対する信頼であると同時に、いわゆる“ヴィッラニ風ワイン”に対する期待を良い意味で裏切り、新しいワインを市場に送り出すことにあると言えるでしょう。彼のワインのもう一つの特徴は速い熟成と最良(飲み頃)の期間が長く続くことです。
 ハンガリーのワイナリーの一つとして、このような量と質を兼ね備えた信頼のおける醸造家が存在するということは感動的です。消費者の立場から見ても彼のワインは世界中の最高のワインと勝負し、大いなる成功の可能性を持っていると言えるでしょう。Kopárワインを高級銘柄の地位に押上げたのは、あの素晴らしい当り年、2000年度産のものでした。
 ゲレ・アッティラは2003年を歴代最高の当り年と考えています。実際に他の年度と比べると、この年のKopárワインが素晴らしいボディーを持つ同ブランドの頂点と言えるでしょう。それも全て十分な日光と適度な雨という天の恵み、そして最適な収穫時期のおかげです。
 この年の特徴は、森の果実、ミント、甘草、漆などの味わいです。この最良の年に最良の畑から注意深く選ばれたブドウから醸造されたKopár 2003は、カベルネ・ソーヴィニョン40%、カベルネ・フラン20%、メルロー40%からなるキュヴィーCuvéeです。それは焙ったオーク樽の中で16-20ヶ月の熟成期間を経てから瓶詰め(ボトリング)されました。しっかりとしたボディーは快活さも持ち、フルーティー、チェリーボンボン風のほんのりとした甘味も感じられ、素晴らしい味わいと微妙な色合いを持つ、魅力的なワインです。
 赤身肉の料理と完璧に調和し、好みによってはチーズとの組み合わせも深い愉悦をもたらしてくれるでしょう。

原文:Kindl Róbert
画像・訳文:高久圭二郎

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