一月一酒　第３回

初出：月刊ハンガリージャーナル　２００４年７−８月合併号

Tokaji Aszú 6 puttonyos 1998
醸造所：Majoros Szőlőbirtok és Pincészet, Tarcal
地区名：Tokaji borvidék

　先の２つのコラムでは、それぞれ非常に有名なワイナリーによる最高のワインを紹介しました。今回は小さなワイナリー、マヨロシュ醸造所から紹介したいと思います。
　多くの家庭経営のワイナリーと同様に、マヨロシュも体制変換後に独立した醸造所を始めました。彼らのぶどう畑は、トカイ・ヘジャイア地区のなかでも良好な条件を持っています。主な栽培品種はフルミントとハルシュ・レヴェルーですが、ミュスカ・ド・リュネル種も一部栽培しています。
　同ワイナリー最初のボトリングは、トカイ・ヘジャイア地区では明らかに当たり年とは言えない1998年のものです。しかしそれに反してその６プットの貴腐ワインは、2003年度パンノン・ワイン品評会の最高賞を獲得しました。
　さらに、年が明けてDECANTERワイン専門誌により、2004年度「中／東欧最高ワイン」の栄誉を授けられました。これは同誌評議会が、おそらく3500本のワインから選んだという点でも、たいへんな栄誉です。
　この６プット貴腐ワインは黄金色に輝き、レーズン、ハールシュ（菩提樹）の蜂蜜、レモン－オレンジの香りを持ち、新鮮でフルーティーなリッターあたり216グラムの糖分が、酸味との絶妙なコントラストを生み出しています。
　合計1590本のみボトリングされた、長く衰えることのない高品質の貴腐ワインを前にして、20～30年も待つことに、我々は耐えられないのではないかと心配になります。全ての名高いトカイ貴腐ワインのように、この６プットも、特別な機会に備えてコレクションに加える価値のあるものです。
　そしてその機会が訪れた日には、フォアグラ・パテ、ブルーチーズをお供に、またはデザートのチョコレート・クリームと共に味わってください。あるいはこのマロヨシュ・ワイナリー・トカイ貴腐ワイン６プット1998だけを、グラス一杯のデザートとして楽しむのも乙なものです。

原文：TŐZSÉR Róbert
訳文／画像：高久圭二郎