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黒バックと写真のトラップ処理

製版処理でのトラップ処理というのを以前に書いたことがある
最初にトラップ処理の必要性を教えられたのはアナログフィルム製版時代。写真製版というかアナログレタッチの時代ではフィルムをネガからポジに反転する時に、ルミラーベースの厚みを通して露光されることで境界部分がわずかにかぶっていい感じにトラップかけたみたいになる。トラッップ(当時はかぶせと言っていた)が特に必要なスミベタとか特色版がある時などは反転時に露光強めたり、フィルムとの間にベースを1枚追加して反転していた。これも以前に書いた

製版がDTPと呼ばれデジタルに移行してイメージセッターからフィルム出力を行うようになると、アナログ製版のような被さりも起こらずピタピタのノックアウトになる。これは出力後の見当確認の時などかなり精神衛生上悪い。出力したフィルムを検版・確認するときに、スミベタに限らず色版と色版の境界が抜きあわせ(ノックアウト)のままでは、見当合わせてポジを重ねた時にフィルムのベース厚も手伝って、少しでも斜めから見ると隙間が空いているように見える。

(当社の製版部署において)スミベタと色文字とか特色とプロセス、金や銀など必要性の高いものなどは黙っていても処理してくれる。しかしバックがK100%とかリッチブラックの上に配置された画像の周りのトラップ処理となると、昔はみんな処理していたはずなのに最近は処理しているオペレーターがいない。作業指示書やカンプに写真のエッジをトラップ処理するように指示していても処理されてなかったりする。何の意味かわかっていないか、そんな場所にトラップする必要がないと思っているのか。おそらく後者なんだろう。

例えばこんな時

黒バックの上の写真

スミベタに対して写真が少し潜りこむように被らせる。複合パスなどで処理するのはちょっと面倒なので、オペレーターが楽にできるように写真との境界にK100%の罫線を上から乗せてオーバープリントをかける。イラストレーターなら写真のクリッピングマスクと同じ位置にスミ罫を乗せる。古いバージョンのイラストレーターではマスクに線の設定ができなかった。余談ですがこの重ねた罫線が次にデータを開いた時に消えてしまうバグがありました。(マスクと合体されるだったかな?回避方法は別のレイヤーで作成することだった)今のバージョンなら普通にマスクに色をつけてオーバープリントをかけられる。InDesignやQuarkXpressなら画像ボックスのフレームに黒を設定すると自動でオーバープリントがかかる。

写真のマスク位置にK100%の線を設定してオーバープリント

昔はそうやることが当たり前だったはずなのに、CTPに移行されてからはフィルム時代のように目視チェックができず処理の確認もままならない。フィルム時代に比べてCTPになって見当精度も大幅に向上したこともあると思うけれど、予め言われてなければだんだん処理しなくなり、そのうち処理しないことが当たり前になった気がする。とはいえやっぱり少し見当がずれるとエッジピッキング起こしたみたいに白っぽいスジが出たり見当ずれが目立つことがある。薄い色の写真やK版の分量が多いと少々ずれても目立たないが、濃いスミ版成分を含まなかったり濃度のあるスミ成分をあまり含まない色のときなどは目立ちやすい。印刷工場から被らせ(トラップ)処理ができていないと叱られることもあった。

リッチブラックでも見当がずれると下網がのぞく
K100%のみだと白く隙間が出ることも

製版処理のなかでもトラップ処理はアナログ的に行うと手間がかかる。どの部分に処理を施すのか知識と経験も必要になってくる。処理を間違ってミスをするリスクもあるし、そもそも面倒だからやらなくて済むならやりたくないというのが本音だと思う。CTPに移行してからは分版されたフィルムで確認できた時代と違い、作業後の分版状態の確認もままならない。(アプリケーションで分版プレビューが可能になったのはインデザインCS、イラストレーターCS4くらいから)とは言え処理をしないまま刷版を焼いて印刷へすすんでも印刷出来ないわけではない。見当バッチリに印刷できることもある。オペの負担にもなるし印刷もなんとかなっているからあまり喧しく言わないようにしている。
印刷機の精度も上がったし刷版出力の際にファンナウトをかけて見当調整できる機能もある。しかしこれは刷版の再出力になる。製版処理において分版プレビューがどの段階でも行え、デジタル検版で分版したり重ね合わせての確認もできるようになった今、製版オペレーターにとっては少し手間かもしれないけれど、印刷段階での刷版差し替えや見当調整にかける時間や刷版を再出力するコスト、印刷物の仕上がりを考えると出力時のこのひと手間を惜しまないで欲しいなと思う。

2023年3月13日修正
分版プレビューが可能になったのがインデザインCS3としていましたが、CS(バージョン3)からでした。

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