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面付け クリープ処理とかミーリングとかなき別れとか

印刷するための刷版を焼き付ける際に、多丁付けや折丁に沿った版面面付け作業を行います。単純殖版といって同じモノを複数面付けしたり、複数の絵柄を印刷定数に合わせて付け合わせたりします。

ドンテン

表面と裏面を同じ面に付けあわせるドンテン面付けという方法があります。通常両面の印刷物の場合表裏各必要な色数分刷版が必要になりますが、ドンテン面付けの場合片面分の刷版で済みます。通し枚数が少ない時などコストを抑えるのに有効です。ただ4色/1色の印刷の場合計5色分ですが、ドンテン印刷にすると4色/4色の計8色になってしまうのでコスト計算をしっかり行う必要があります。

ドンテン面付け

折丁

ページものでは折丁に合わせてページを展開した状態で面付けします。台割表と照らし合わせながら効率の良い面付けを行います。用紙の厚み、製本コスト、台割りの構成などによって16ページ折や8ページ折、ページサイズによっては12ページ折などがあり、台割によっては幾つかの折り方を組み合わせて面付けを行います。

紙で折った折丁
展開した折丁
中綴じ32ページ(16ページ折×2台)
4ページ折 8ページ折
16ページ折 8ページ折の2面付
黒いマークは背丁のはいる位置

用紙が厚い場合は折皺が出にくいようにドブを広くとるとか、PUR製本でのミーリング処理、中綴じ製本でのラップ、クリープ処理などの製本方法に合わせた処理、コデックスの時の背丁の位置、送りピッチなど注意事項を列記しだすとキリがないのでここでは大雑把な内容のみにしておきますが、後加工によってはいろんな決まり事があると思うので、製本所に確認して作業を進めることが大事です。

製版的に面付け時にちょっと面倒な処理とその処理方法を少し書いていきます。
あくまでも当社での処理方法なので、他にもやり方があるかもしれません。
より良い方法があれば是非教えて欲しいと思います。


中綴じ製本でのクリープ処理

中綴じでページ数が多かったり紙が厚い場合冊子の内側のページが外に飛び出すようになります。小口側の共通の柱や絵柄・ノンブルなどのズレを防ぐために、いちばん外側の寸法からいちばん内側の寸法を引いたクリープ値を求め、紙の枚数(実際には一番外側は移動しない為1を引いた枚数)で割った数値を、内側になるにつれその数値の倍数でオフセットしていきます。紙一枚に対して両面を同じ数値分移動させます。もしノド側に見開きの絵柄がある場合はそれができない為、処理しないかネイティブデータ上でその部分以外を移動する事になります。当社では基本的にはRIPに出力用PDFを登録した後にRIP上で数値入力してオフセットしています。この時オフセット量によっては小口の塗りたし量が少なくなってしまう為、データ上で増やしておき、出力時にも塗りたしを多めに書き出す必要があります。
RIPには自動で計算させる機能があるようですが、ページサイズがおかしな事になったのでずっと手入力で処理しています。

紙1枚の両面が同じ数値になります


クリープ値を求めるには実際に束見本を作成して実測するのが一番です。
束見本がない場合は紙厚を測って紙の枚数+ノドの丸みを考慮した寸法から割り出す事になります。1枚の紙厚(イ)に紙のページ数の半分(紙の枚数分)(ロ)を掛けて冊子の厚みを計算し、中綴じのホチキスで止めている背の丸い部分を円とみなし、先に計算した厚みをその円の直径として計算すると、(イ×ロ×π)÷4となります。背の部分の円周の4分の1を先のCの数値と見做している理屈です。このやり方が正確とはいえませんが近しい数値にはなっているかと思います。
(実測と計算値では誤差もありできるだけ束見本を作成することをお勧めします)

実際の束見本 表紙+48ページ
(オペラクリームマックス 46.5kg)

綴じ部分を円周で求めるにはちょっとツライ形状ですね。

クリープ幅は用紙(12枚-1枚)で3ミリでした

PUR製本でのミーリング処理

PUR製本ではノド側にも塗りたしを追加作成します。この作業は実作業ではかなり面倒な作業になります。見開きでデータを作成する際にノド側に塗りたしを付けてあるデータはほぼ無く、インデザインなどのページレイアウトソフトにもその機能はありません。ドキュメント設定で断ち落とし設定ではノドの塗りたしの設定はできます。(ごく稀にイラストレーターで作成されたデータで見開きデータを単一ページを隣接させて作成されたデータを見かけることがありますが、後述する理由でミーリング処理する必要があります)

単にノド側に塗りたしを付けられるように見開きを単一ページに分離するだけならば、インデザインで左右ページを分割してくれる便利なスクリプト「Separate Pages」があります。

スクリプトを実行すると下段のように左右ページが交互に分離されます

全てのページが一瞬で処理されます。デザイン的に問題なけれがこれでも良いかもしれません。ただ使用してみた際にテキストボックスが少し移動したりしたことがあり使用に際しては注意が必要です。そして見開きにまたがるアイテムがあると片方のページにだけになってしまいます。

スクリプトを実行すると
見開きにまたがったアイテムが片方だけになる

実は見開きにまたがったアイテムや写真は、わざわざミーリング処理しなくてもノド側に塗りたしがついた形で処理されるので分離する必要はありません。見開きで繋がっているアイテムだけなら分離処理する必要はないということです。

実際にはこんな感じでノドを境界に絵柄が切り替わる部分があるページだけを処理します。手順はページウインドウの右上から「ドキュメントページの移動を許可」のチェックを外します。

チェックを外す

分離させるページを選んでそのまま横にドラッグします。ページアイコンの横に縦のバーのようなものが出たら離します。

選択したページの見開きが分離されました

この方法でも見開きでまたがっているアイテムはやはり同じように片方のページだけになります。こんなアイテムは手作業でコピー&ペーストで処理します。

分離されたページアイテムを選択して「コピー」します
アイテムが欠落しているページアイコンを選択してから
「元の位置にペースト」で同じ座標にペーストされます

分離が必要なページを全て処理して、必要な部分のノド側の塗りたしをそれぞれ手作業で追加していきます。手作業で面倒な作業の上、見開きを分離されたデータをデザイナーに返却すると「見開きでプリント、PDF書き出しができないから困る」とよく言われます。なんとかしたいのは山々ですが、もっと良い方法があれば逆に教えていただきたいと言った所です。

番外で「ドキュメントページの移動を許可」のチェックを外したあと、ドキュメント設定で見開きのチェックを外すと、一見見開きに見える単ページのドキュメントになります。ページツールでページを移動するとページ間に塗りたし分の間隔を空けることができますが、アイテムの移動などが面倒です。見開きでまたがっているアイテムは左右ページそれぞれに分離してトリミングする必要があり実際的ではないのであくまでこんな方法もあると参考までに。

見開きのような単一ページドキュメント

なき別れ

実はこの記事を書こうと思ったきっかけは、面付け時に対抗ページの絵柄によって、本来絵柄のないはずのところにうっすらと現れる細いスジのことでした。このスジを「なき別れ」と呼んでいます。スジが出る原因というのはデータでの数値がミリであるのに対して内部演算(postscript)での単位がポイント(1/72インチ)であることの僅かな誤差で発生するというものです。ページの仕上がりサイズの中に対抗ページの絵柄がほんの僅か入り込んでしまった結果になります。

例えば25ページにノド側いっぱいにベタがあると
演算結果で対抗ページの24ページにスジが出ることがあります

全く絵柄がない部分なので見つけると「なんで?」ってなってしまいます。

実際に印刷時にでたもの ノド側にうっすらとスジがでている

校正などでもスジが出ていて取るように指摘を受ける事も多々あります。しかし
スジはノド側に細く出ているだけなので、実際に製本した際には綴じ部分で隠れてしまうため問題になることはほとんどありません。問題はないはずと思っていましたが、先日中綴じの冊子でスジが見えると指摘を受けました。ノド側付近に絵柄や文字があり開いて注視すると、問題ないと思っていたスジに気が付いてしまったというものです。中綴じは確かに大きく開くとノド側の奥まで見えます。製本時にも多少位置ずれする事もあるので少しページ側に寄ることもあります。
このスジが出る現象、必ずしも全部消す必要はないと思っていたのですが、こういう場合もあるんだと教えられました。

対応処理はPUR製本のミーリング処理で説明した方法と同様に、単一ページに分離して対抗ページの絵柄が干渉しないようにすることになります。この場合塗り足しの作成は必ずしも必要がありません。

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