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山の神々の頂点に立つ大山祇神

山で会ったらこんにちは!低山ハイカー英武ゆうです!

前回は修行の場としての山岳信仰の歴史についてお話ししましたが、今回は山の神様そのものに焦点を当て、特に山の神々の統率者である大山祇(オオヤマヅミ)神についてお話ししていきたいと思います。

※本稿では諸説ある中の一部を取り上げています。異なる説もありますので、一つの見方としてお読みいただければ幸いです。

山の恵みを司る神

大山祇神は、日本の山の神様の総元締めとも言える存在です。山の神々は、山の周辺で生活する人々が受ける様々な恩恵を神格化したものと考えられています。

例えば、農業を営む人々にとって、山は命の源である水をもたらす存在です。その水によって穀物が育ち、生活が支えられます。また、山からは道具となる木材や、食料となる植物や動物など、生活に必要なありとあらゆるものが得られます。これらすべての恵みが、山の神様からの贈り物として捉えられていたのです。

この信仰は現代にも受け継がれており、山に人の手を加える際には、山の怒りを買わないよう大山祇神を祀る習慣が残っています。例えば、ダム建設や石材採取などの事業を行う企業の多くが、大山祇神を祀っているのです。

山と海の神:意外な一面

興味深いことに、大山祇神は山だけの神様ではありません。その名の「大山」は、人間が目にする中で最も大きく威厳を感じる山を表していますが、実は海の神としての側面も持っています。

大山祇神の本拠地は、愛媛県の大三島町にある大山祇神社です。大三島は瀬戸内海の芸予諸島の中心に位置し、広島県と愛媛県の間にある水運交通の要所でした。この立地から、大山祇神は海の神としても崇拝されるようになりました。

さらに、海での武力衝突も考慮され、軍神や武芸の神としての性格も併せ持つようになりました。特に戦国時代には、この側面での崇拝が顕著だったとされています。

全国に広がる信仰

大山祇神を祀る神社は、三島神社や大山祇神社という名前で全国に広がっています。「三島」という名称は、本拠地である愛媛県の大三島に由来し、三島明神などとも呼ばれました。現在、関連する神社は約1万社にも及ぶとされています。

お酒にまつわる逸話

大山祇神には、さほど多くのエピソードは残されていませんが、興味深い逸話の一つに、お酒に関する物語があります。大山祇神の娘が結婚して出産した際、お祝いの振る舞いとして初めて米からお酒を作り、周りの神々に振る舞ったとされています。

このエピソードから、大山祇神は「酒の神」または「酒造の神」として、また娘の木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)は「酒木の神」として崇拝されるようになりました。

余談ですが、「取酒醒酔(しゅせいすい)」という言葉があります。一見、大山祇神にまつわる神々しい四字熟語のように見えますが、実は「迎え酒」という意味で、二日酔いの気分の悪さを、新たな酒で紛らわすという意味を持つ言葉なのです。

より詳しい山岳信仰の歴史や文化については、YouTube「低山ハイカー英武ゆう」チャンネルでご紹介していますので、ぜひチャンネル登録をお願いします。みなさんと山でお会いできる日を楽しみにしています!


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