登山用品の寿命を知る:避けられない劣化のメカニズム
山で会ったらこんにちは!低山ハイカー英武ゆうです!
大切な登山用品が突然使えなくなった経験はありませんか?レインウェアの劣化や登山靴の剥がれなど、意外と多いのが登山用品の劣化トラブル。今回は、避けては通れない登山用品の経年劣化、特に「加水分解」という現象について詳しくお話ししていきます。
加水分解とは:避けられない劣化の正体
加水分解は、空気中の水分が物質と反応して分解が進む現象です。残念ながら、空気中には常に水分が存在するため、完全に避けることはできません。特に気を付けたいのは人工的な素材です。
ゴムやプラスチックなどの人工素材は、高温や圧力、触媒などを使って製造された不安定な物質。自然環境下で水分や紫外線にさらされ続けると、物理的な圧力や傷、化学的な作用を受けて、徐々に強度を失っていきます。これは、素材の強度を保つために必要な分子の結合が壊れていくためです。
どんな素材が影響を受けるのか
加水分解の影響を受けやすい素材は、私たちの身の回りに数多く存在します:
ポリカーボネート(スーツケースやサングラスなど)
ポリエステル(衣類やペットボトル)
ナイロン(衣類やバッグ)
ポリウレタン(靴底や繊維)
特に登山用品でよく使用されるポリウレタンについて詳しく見ていきましょう。ポリウレタンは、ストレッチ性のある衣類や靴底、接着剤、コーティング剤などに幅広く使用されています。
引っ張りや摩擦、油に強いという利点がある一方で、加水分解に弱く、空気中の窒素酸化物や塩素、紫外線、熱、微生物などの影響で徐々に分解されていきます。特に登山靴の場合、ソールに付着する水分と微生物の影響で劣化が進みやすいのです。
主な登山用品の素材と劣化
テント
テントには様々な素材が使用されていますが、主にフライシートにポリウレタンコーティングが施されています。他にも、フッ素系樹脂(撥水性に優れる)やシリコンコーティング(強度は高いが通気性が低下)なども使用されています。
レインウェア
レインウェアの素材は、価格帯によって大きく異なります:
低価格帯:ポリ塩化ビニル(PVC)コーティングやポリウレタンコーティング
高価格帯:ゴアテックスなどの透湿防水素材
低価格帯の素材は蒸れやすい傾向がありますが、用途によっては十分な性能を発揮します。例えば、釣りなど運動量が少なく防水性重視の活動では、むしろ適している場合もあります。
登山靴
靴底には軽量で耐摩耗性に優れ、衝撃を吸収するポリウレタンが多用されています。エバー素材(EVA)も使われますが、こちらは素材自体の寿命は長いものの、各部位を接合する接着剤の劣化による剥離が課題となっています。
劣化のチェック方法
モンベルの店員さんから教えていただいた登山靴の劣化チェック方法をご紹介します:
アッパーとソールを逆方向に引っ張り、接合面に小さな空洞が見えたら要注意
ソールを指で押し込んで、凹みが戻らなければ買い替え時期
メンテナンスと保管のコツ
加水分解を完全に防ぐことはできませんが、適切なケアで製品寿命を延ばすことは可能です:
使用後は必ず汚れを落として乾燥させる
風通しの良い場所で保管する
たたんで収納せず、ハンガーにかける
必要に応じて乾燥剤を使用する
新素材の登場
嬉しいことに、登山用品の世界では次世代素材の開発が進んでいます。従来の素材より耐久性が高く、加水分解にも強い新素材が続々と登場しています。現在使用している用品は消耗品として考え、買い替え時期には、その時代のスタンダードとなっている新しい素材製品を選ぶことをお勧めします。
より詳しい登山用品のメンテナンス方法や選び方については、YouTube「低山ハイカー英武ゆう」チャンネルでご紹介していますので、ぜひチャンネル登録をお願いします。みなさんと山でお会いできる日を楽しみにしています!
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