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日本国憲法第四十六条

参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

歩道に落ちたイチョウの葉が絨毯のようになっていた。前日の強風のせいだろうかと考えながら、昨日2020年最後の出勤の朝を迎えた。
昨日も今日も恐らく明日も、同じ一日を過ごして終わりを迎える。普段と違うことと言ったら行きも帰りも電車がガラガラで快適だということくらい。
仕事を終え、朝と同じ道を歩いたらイチョウの葉は無数の人に踏まれ粉々になっていた。

今朝も同じように、強風に晒されながら駅に向かった。元旦の朝は雲一つない晴天だった。時間に追われながら出勤することなどない。今日もゆっくりと歩きながら空を見上げた。
大晦日も元日も出勤だと、特に変わらない毎日が続いているように思えるから不思議だ。いやきっと、本当に変わらない毎日が続いているだけなのだろう。




終わりの始まり。出口への入口。
6年前の私は希望に満ちた新入社員で、これから輝かしい未来に向かっていくことを信じて疑わなかった。
3年前の私は足元のイチョウの葉に目を留めたり澄んだ空を見上げることができるようになることなど想像できなかった。
進んでいく日々に、時間に、逆らうことなどできない。確固たる意志を持ち、自分自身の足で歩いていくこともあの頃にしてみれば必要なことだったと思うし、色々なものに押し潰されて地を這うように命からがら辛うじて前に進もうとしていたあの頃も、きっと必要な経験だったのだろう。

今はただ、時間に逆らわず流されすぎず、うまく付き合っていくことで自分を保てている。何度でも言う。大人になるとはそういうことで、だけどつまらないことじゃない。


年始の挨拶が飛び交うのなんてせいぜいここ一週間くらいで、LINEグループで個人的な発表をして祝ってもらおうとする人の気持ちを理解しようとしては毎回ドツボにハマるのもせいぜいここ数年だろう。

部屋に帰れば母と姉が私の部屋でお節を用意して待っている。今年は実家に帰らない代わりに我が家の女性陣が襲来してきた。
そういえば去年は父親に会ったっけ、と律儀に日付が変わる瞬間にあけましておめでとうLINEを送ってきた我が家の唯一の男性のことを思い出した。

理由などないが、あと数分で家に着くのに少しコンビニで時間を潰している。こんな無為な時間もまあ、あって然るべきだろう。

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