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日本国憲法第四十九条

両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

「結婚とかしたいと思ってます?」
「子どもって好きですか?」
「結婚前に一緒に住むのってどう思います?」

今まで聞きたかったことを一気に聞いてみた。本意なのかなんて一生分からないけれど、取り敢えずここ数年のポリシーである「言葉は額面通り受け止める」を守り、彼の言葉で安心を得た。

傷付きたくない。でもそれ以上に傷付けたくない。更にでもを重ねると、優しい彼が私を傷付けたという罪悪感から離れていってしまうことが怖いから、そのために傷付かないようにしている。
モヤモヤもそれを越えた苦しみも、“言わない”ことでその体裁を保ってきたけれど、やっぱり私も聖人君子ではない訳で、馬鹿みたいだが普通に体調が悪くなったりする。

道を踏み外してしまうのが怖い、と言ったらそんな簡単には離れないよと言われ、意外と丈夫で幅の広い橋だったのだと知った。ここでも額面通り受け止めているだけだが。

「うん、思ってるよ」
「うん、好きだよ」
「それが普通だと思ってるよ」

淡白な返答に安心もしたけれど申し訳なさも感じた。私が面倒な奴だということは重々承知してもらっているし、それを言うなら彼の面倒さもかなり分かってきた。
お互いにずっと探り探りで、どこまで己の面倒さを出して良いものかと相手の顔色を伺ってきたけれど、もういいかと突破口を開いた。


とどのつまり、彼は自身の経済状況を懸念しているようだと判明した。そして私が恐らく約一年後には国家資格を取得してある程度の収入が見込める職に就くことを、コンプレックスまでとはいかないが多少気にしているらしいということも分かった。
立場は違くとも、同じ会社に勤めているから分かる。私は派遣で時給で働いているから今の仕事内容と収入は相応だと思うしそれなりに満足している。だけど、社員として固定給で働く彼が満足しているとは到底思えないし、実際に口にも出している。

一緒に暮らす、結婚するということは生活を共にするということで、それはつまりお金と密接に関わってくる。幸せと収入は必ずしも比例しないけれど、やっぱりあるに越したことはないし、ある程度の幸せはお金で得られることも知っている。それが豊かさに繋がるか否かはまた別の話だが。

彼と一緒にいられるなら私が馬車馬のように働いたって構わない。だけど、彼がそれを望まないことも痛いほど分かる。

緊急事態宣言が出ようと、うちの会社は関係なく24時間365日稼働し続ける。当然、私も彼も毎日出社して日々の業務をこなしている。
コロナもインフルエンザも風邪も、多分一緒になりますよね、もしかしたらそれで社内にバレるかも知れないですねと少し笑い、電話を切った。また明日会社で、と言い合い現実を見て寂しくなったが、元気で会えればそれでいい。
明日は共に睡眠不足で仕事をする。まさかそれでバレまいな。


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