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日本国憲法第三十六条

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

所謂「拷問」がどういうものなのか、具体的にはよく分からない。だけど死刑制度については、正直反対はしない。
被害者にも加害者にも、その家族にもなったことはない。だけど、遺族の懲罰感情を思えば、やはり死刑はあって然るべきで、もし極刑がなければ新たな犯罪も起きかねないと思う。傷付く人も、傷付ける人もそれ以上増やさないように、死刑は必要だと思っている。


年明けから始まる実習に備えて、仕事の引き継ぎが行われている。土日しか出勤できなくなるため、今平日に行なっている作業を別の人に任せることになった。
教えつつも、朝8時から10時までの間に終わらせなければいけない仕事が山ほどあり正直てんやわんやになっている。そんな折、もはやイレギュラーとも呼べないほど毎日起きる不測の事態が一昨日も発生した。段々と流れが分かってきたため、私の仕事を引き継いでくれている彼に殆ど作業を任せていたが、タイムリミットギリギリで発生したそのトラブルに対応するため私を含めた3人の総力を結集した。申し訳なかったが、彼を蚊帳の外にした。

なんとか時間ギリギリに間に合い、一息ついたときふと彼を見ると泣きそうな顔をした30歳がそこにいた。いつもみんなをまとめるリーダーで、私も幾度となく助けてもらった頼りになる人なのに、こんなに情けない顔をさせてしまったのかととても反省した。しかし、それ以上に反省していた彼の落ち込み方といったら、見ていられなかった。
何度も「ごめん」を繰り返す彼に、「〇〇さんのせいじゃないですよ、大丈夫ですよ」としか言えなかった。

元はと言えば、この仕事をやるために雇われているのは私で、それを勝手な都合でやるべきではない人に任せてしまったこちらが悪い。だけど、それを言い出したらきっと優しい彼は私に「『申し訳ない』と思わせてしまった」ことで更に落ち込む。せめてそれだけは避けねばと、笑顔で大丈夫ですと繰り返した。



一番酷なのは自虐だ。
いっそのこと誰かに怒鳴られたほうがマシだと思うことがよくある。自分がミスをしたのに、誰にも怒られないとき、そして自分以外の人が謝ったり責任を取っているのを見たとき。申し訳なくて死にたくなる。自分を責め、どん底まで落ちる。
他人の慰め方を、私はよく分かっていない。そっとしておいて欲しいのか、優しい言葉をかけて欲しいのか、その判断がつかずただひたすら相手の言葉だけを聞く。それが正しいのか、それも分からない。

昨日は彼が休みだった。今日は私が休みで次に会うのはようやく明日。就業間際に突然腰痛に襲われたのは朝のトラブルからくるストレスのせいだったのかは分りかねるが、とにかく肉体も精神もゆっくり休めて元気な姿を見たい。

大丈夫、あんなの極刑にも自虐にも値しないくらいのミスです。何かあったら話くらい聞きますから。また飲みに行きましょう。

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