初秋の虚無対策

忙しい日々を駆け抜けるのは、それはそれで充実感がある。駆け抜けていると悩む暇もないし。
でも、ふとしたタイミング、例えば帰り道とか寝不足の朝とか、心にすっと虚無感が入り込む時がある。もちろんそれなりに疲れているし、気づいていないストレスもあるんだろうけど、ゆっくり寝たり、ストレスを解消しても消えないときが多い。
今週久しぶりにそれを味わった。

虚無。
最近読んだ本に出てきた。
ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」。主人公のバスチアンが読み始めた本の中の世界、ファンタージエン国は、徐々に虚無 -何も見えない無の空間- が広がり、滅亡の危機を迎える。虚無はブラックホールのように周りのものを吸い込み、広がる。近くにいるものは抗えずむしろ惹かれるように、虚無に吸い込まれていく。

ファンタージエン国のキャラクター達はこの虚無の拡大が、すべての創始者でファンタージエン国の統治者である女王”幼ごころの君”が病に伏せていることと関係していることに気づく。そして、女王の病を治す方法を探求する物語が始まる。

幼ごころの君。たしかにそこら辺を走り回っているような子供達は、虚無感とは無縁だ。
子供がえりしたいという話ではなくて、大人の私は私で、虚無と対峙しないといけない。「はてしない物語」を読み進んで行けば、そのヒントは得られる。

イマジネーション。想像力や空想力。

私の心に虚無が現れるときは、忙しくて何も考えず集中して黙々とタスクをこなしているときだ。それが一番効率的だからだ。想像や空想を捨てて、何も考えず淡々と過ごす日々。

ご飯の準備が良い例だ。
忙しいと、夜ご飯を牛丼屋とかで済ませてしまう。栄養をとることを目的に、お金で買って、摂取するだけ。

自炊ができているときは違う。スーパーに行って、冷蔵庫の中身を思い出しながら、今夜自分が食べたいものを考える。考えながら、例えばお肉のコーナーの前で、鶏肉よりひき肉の方が安いなあ、じゃあメニューはこう変えようかなあとか考えて、買い物する。
帰って、調理の順番を考える。どうすれば美味しく、きれいにできるか考えながら下ごしらえをして、味の調整をする。

ここまででめちゃくちゃ考えるんだよね。おいしくなることを想像して。
ご飯を食べるという行為を、イマジネーションとともに準備する。

普段の仕事も同じで、忙しいときはどうしても、枝葉の仕事が増えてくのだけど、その枝葉のもとにある幹を、大きな木の姿を、その木のある風景を想像できるかどうか。

イメージとともにタスクを進めて行くことかが、2018年初秋、私の虚無対策。
物語の世界とこの世界を行き来できる私たちには、できる。

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