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【スケッチ】不登校ここの部屋⑯暴力の起源

 夢を見た。おとうさんの夢。

 とても重要な夢だということが見ていて分かった。自分の起源。

 うちがなぜ生き難いのか。うちがなぜ常に怒りに満ちているのか。そうゆうことを示唆する重要な夢だった。

 結局南極、うちはおとうさんに抑圧されていた。言いたいこともいえない。欲しいと思うものもほしいと云えない。おそろしかった。おとうの暴力が。

 暴力性と、男性の性に憑き物の突発的な行動がこわかった。

 夢を見ていて、息がしにくかった。存在がしにくかった。生きていることが苦痛だった。

 大見えを切って、うちは息を深くした。

「いやなんよ」

「はあ?」とおとうが万座毛のように顔をひろくして、また赤くして返した。

「いやなんよ」

「何がよ」

「(おまへが)」

「は?」

 身体が小刻みに震え(いかりで)息がし難い。

 でも、うちには分かっている。何が暴力の起源なのかということが。(おまへだ、おまへなんだよ)

 おかあさんは視野の隅にいる。なんでよ?

 どうしてこうゆー時に母は何も言わないのか。何もしないのか。むしろあんたの為を思ってうちは発言しているのに。

 だから。

 だからだから。

 うちは目が覚めた。喉が渇いていた。

 白い影。雌猫だ。うちで飼っている猫。

 猫はうちの異常を察し、肩口のところに座っていた。白い猫。

 うちはおっさんのように立ち上がり、ペットボトルの水を飲んだ。トイレに行き、便座にすわって小水を垂れ流す。

 暴力の起源。

 起源があったのだからこれは、この現象はこの先も延々と続く。どこかで誰かがやめない限りは。

 全部嘘だ。

 猫いがいは全部まぼろし。と思うことにしてトイレットペーパーを千切って股を拭いた。

 おっさんのように腰が痛い。背中がいたい。何とか、暗闇の廊下を歩いた。人類史のようにあるいて、部屋のマットレスにたおれた。

「おまへだ、おまへなんだよ」

 と、思う。

 ゆるゆると現実味がまして、夜の闇だということが分かる。時刻は、午前三時ぐらい。部屋の、窓。風。

 そして猫。

 寒気。

 左の肩から、白い猫が慰めるように布団に入ってくる。それを抱きしめる。あたたかい。肉球は、まだ冷たいが「grrr,grrr」と囁く猫の本体は毛先はつめたいが中身は暖かい。

 それを抱き締める。

 暴力の、その逆をだきしめる。あたたかい。

 どこまでもあたたかく、果てしがない。

ぐ本稿つづく

#不登校
#ここの部屋

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