【スケッチ】不登校ここの部屋⑤うちらの下着は部屋干し
バチッ
静電気の季節。乾燥。観想。墓場の草刈り不要。
凪子ちゃんが家に来てから、お母さん、うち、凪子、猫(♀)という風に、この家は女が四人、そして男はお父さんだけになった。
「もういやだ~。なんかもう帰ってきた気がしない。女ばっかり。ほんとにいやだ。息つくカンジがしない」
とお父さん。
一方お母さんは若返ったみたいで毎晩深夜までガールズ・トークをしている。
ここで分かったのが、以外とお母さんがヤってきたこと。
「そりゃそうよ。あんたらもさっさと済まして、あれよ」
「なに」
「まあまあ」
お父さんは遅くに帰ってくるようになり、煙草と香水、賭博の匂い。
🎤
お母さんはお父さんが帰ってこないので凪子の母に相談に行き、その結果相談役として一緒に住むことになった。弁ヶ嶽とその麓の鳥堀平野、川を挟んで石嶺のアパートは引き払い、汀良(てら)のマンションに、お母さん、ここ、凪子、凪子母、猫(♀)、そして父が暮らすようになった。
鳥堀の墓の世話は玉那覇さんと、ここの父の微妙な知り合いのTに頼むことになった。
汀良のマンションは圧倒的に女が多くなり、ガールズ・バー、あるいはスナックのようになったが、父は寄りつかなかった。代わりに近所の、鳥堀や汀良、石嶺、赤田、崎山、久場川のおっさんたちがちょくちょく来た。微妙な知り合いのTも来た。
ここの母は仕事を辞め、本格的にサロンに顔を出すようになった。
「猫の看板、いいね」
とTさん。
「そうよ。占うわ」
「うん」
「JJは?」
「無理とおもうよ」
「え? そうなの、ここちゃん」
「うん……」
この日、テレヴィでは誰かがだれかを刺したとか、挿したとか、PR会社が勝手にさしたとか、さしでがましいですがとか、さもありなんというような報道がされていた。要するにいつものことである。
その頃、
墓場ではここの父が横たわり、傍らには桃子が居た。
「桃子、ようやく会えたの」
「JJ、しっかりしいや。こっからの八年よ。八年は生きてな」
「うん……」
「寝たら死ぬよ、冷えてるから空気」
「……うん……」
「JJ。JJて」
また夏が来るだろう。山ではなくヴェランダに衣を干すことができればいいのう。真っ白な。
さらしや、更科が風になびくといいのう。
「ここ、おもしろいな」
自分のことだと思うここ。
「カラオケある?」
無敵の三本マイク
凄腕DJ、マスターキー(^^♪
本稿つづく