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【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ㉘

 もうすぐ夏休みまえの、学校の放課後。

 その日か、その次の日か、次の次の日か、そのまえか。前のまえの日か。よく覚えてない。

 放課後のまえ、帰りの学活の時、きゅうに窓の外がくらくなり、どろん、と音が鳴った。まっくらになり、ぴかと白くなり、いきなりドガン、ドガンとかみなりが落ちた。

 きゃー。と女生徒。

 とにくチョッキン・オーケーのこわがりぶりがひどくて、取り乱して机のしたにはいり、「いやだー」となっていた。「たすけてー」と。

 ざーと土砂降り。どろん、どろん、どろろん。ぴか、ドガガン、ドガン。

「うわー」とチョッキン・オーケー。

 おれはぜんぜん、雷はこわくない。むしろすき。見に行くぐらい。

 いきなりそらに逆向きに木の枝が伸びるような亀裂ガガすき。

 摩訶不思議。生命・エネルギーにみちているかんじがする。

 雨は箱舟レヴェルのすごい量だが、待っていれば通り過ぎる。やがて南の窓は晴れているのに、北の窓は土砂降り、となる。こういうのをカタブイ(片降り)という。

 晴れたので、おれは部活に行った。部員は48人いるが、その日は3人しかいなった。おれらはグラウンドの隅で三角になり、練習した。

「はい」「おーけー」「ナイス」「ほっ」「よっと」「はいはいはい」

 みたいな感じ。

 というかこの学校のグラウンド狭すぎるし、人が居過ぎる。サッカー部もいるしラグビー部もいる。女子ソフトボール部もハンドボール部もいる。数日後に控えたスポーツフェスに向けて勝手にバレーの練習をしているクラスもあるし、陸上部が走り回っているし、弓道場に入りきらない下級生の弓道部までいる。ソフトテニス部は、テニスコートが硬式テニス部に使われている時間なので、78人ぐらいが集まってラケットを振り回し、素振りをしている。

 あぶねーだろ。どう考えても。せめて弓道はやめろよ、と思う。ころすきか?

 野球部はめっちゃ広いグラウンドを与えられているが、あるいてサムシプン(三十分)かかる石嶺まで行かねばならない。

 武道場は柔道部となぎなた部と柔道部が練習している。人口密度がやばいし、めちゃくちゃ、暑いし、くさい。気絶寸前。

 ボロボロの体育館ではバスケ部とバレー部と体操部と新体操部とバドミントン部が練習しており、舞台では卓球部と演劇部が練習している。

 ていうか、タイム・スケジュール分けたら?とおれはいつも思うのだが、だれも思いつかないらしい。バカしかいないのかな。

「あ」とケンサク。

 振り返ると、グラウンドの外に桃子が立っていた。

 妙な顔をしている。なんだ。

本稿つづく

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