【掌編400文字の宇宙】書き方をおしえてくれた先生
作文が大きらいだった。まず何を書いたらいいのかわからない。原稿用紙を見るとおえーっとなる。
「じゃあ、ノートに書きなさい。縦でも横でもよろしい。起きたことをあったことを全部書きなさい」
「ぜんぶ?」
「はい。全部です」
先生はノート一頁の真ん中に線を引いた。次の頁にもひいた。見開き四分のいちの空欄をゆびさして、
「ここに一日分を書きなさい。これ以上は書いてはいけません」
と言った。
書き始めて、なにをかいていいのかわからないので、お母さんに怒られたとか妹とケンカしたとかを書いた。空欄は余った。
何日かしてだんだん書き方が分かってきた。わかってくると書くというものはいろいろある。何時に起きた、何を食べた(感想)、友だちと話したこと、給食のこと、あそんだこと、ゆうれい話、こわい噂、大人のようす。などなど。
欄が足りないので「もっと書いていいですか」と先生に聞いた。
「ダメです」と先生ははっきり言った。
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