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【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ㉞

 1991年7月16日(火よう日 仏滅)←日記に書いていたので分かる。

🌞

 校長室に、よばれた。

 いくと、桃子がいる。白のノースリーブのシャツ。ホットパンツ。裸足にスリッパ。肩に入れ墨が入っている。イツノマニ? 赤と黒のなんか陰陽みたいなやつ。あと、首筋に横文字(←仏蘭西語で「お金ちょうだい」という意味らしい、あとで聞いた)

 こいつヤベーだろ。と思った。こんな小学校の先生とか、いないし。

 でも、久しぶりに桃子が見れたので、めっちゃ嬉しかった。

「バカ垂れ!」と、剣道部の顧問の先生が怒鳴ったので、見ると、桃子はアイコスを吸っていた。

「え、アイコスもだめなんここ?」

 と桃子(というか時代が違う? 1991年じゃなくね?)

「みせいねんだろが、アホ」と顧問。

 校長のはなしは、先日、きみたちふたりが学校に寝泊まりしていた、BBQをして、さけをのみ、酔っ払ってねていたという情報がはいりました。というものだった。

 なんか事実とちがうけど、とおれは思ったが、ま、話を聞いた。正確に伝聞される事実なんて、この世にはひとつもない。ひとつたりとも。

 おれは神妙な顔をした。

 桃子はアイコスを手の中でいじくりながら、きく素振りすらみせない。ヤバいだろこいつ、と思った。

 あのねえ、あなたたち、校内でかってに、火をつかうとは何事かね、と校長。せんねん、首里城本殿も焼失しましたね(時代ちがくね?)。あのような、琉球、沖縄のぶんかの象徴が焼け落ちるという悲劇をけいけんしながら、なんでこうも手前勝手なことができるのかな、そうぞうりょくがないのかな、いつもわたしはいってますよね、そうぞうりょ・・・。

 というかんじで話しにはなして、校長は話し終えた。

「以後注意するように」

 と剣道部顧問が言った。この先生は、生徒指導部のトップらしい(あとで久美子にきいた)。というかこの学校に生徒指導部というのがちゃんとあったんだ、とおれは安心した。

 ほんとうに、すみませんでした。

 おれは頭をさげた。

 桃子は何も言わない。シラネーシ、みたいな態度。こいつヤンキーになったのかな、とおれはカンジタ。

 解放せられて、おれと桃子は一年五組に行った。

「ひさしぶり」

 と桃子は言って、ちょっとうれしそうだった。

 桃子は教室のガラスを箒の柄ですべて叩き割り、机と椅子をぜんぶ廊下にだして、美術クラスの生徒の美術バッグを勝手に開け、赤い絵の具を大量につかって、教室の床に、

 はしれ、はしれ、はしれはしれ

 と書いた。

 という事実は起こらずに、何となく教室を見て、おれと桃子は裏門から出た。なんだかんだ19時まえになっていた。

 日はかたむいたが、夏の空はまだまだ、あかるい。

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◇引用
 『サンクチュアリ』(エピソード7「ネットフリックス 2023」)

本稿つづく 


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