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【連載小説 中篇予定】愛が生まれた日㉛きぶつしんし(辞書に載ってない)ちゃんと仕事したら?

「きぶつしんし」という言葉がある。

 古語では終止形「し」。現代語では「い」の形容詞では形容できない境地があるので。そもそも形容詞も動詞も数が圧倒的に足りていない。用言にしても名詞(体言)にしても、森羅万象を写そうとするときに、感じるのはその数の圧倒的な足りなさである。

 だから、用言にも体言にも終息されない印象とか感情をあらわそうとすると方法論として「きぶつしんし」という技術が生ずる。

「きぶつ」は、「寄物」だと思う。ものによするとよむ。

「しんし」は「心思」、もしくは「ちんし」の「伸思」なのか、じゅつし「述思」「述詩」「述詞」なのか。わからない。

 たしかめようがない。家にある辞書には、どれも載っていないのである。

 森羅万象を写そうとするときに、用言や体言では足りないので物に寄せる、寄せて心の奥底を掬い取っておもてに出そうとする。

 こんな、基本的なことも載っていない辞書(『広辞苑 第四版』ほか)なんて、辞書と名乗っていいのかしら。私はそうは思わない。

 イライラする。

本稿つづく

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