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【私の病】私に現金を持たせてはいけない、不能だろこいつ……という話(後篇③)

<あらすじ>私ははっきりいって、お金が嫌いである。とくに紙幣がいや。きたない。にもかかわらず、ある日私はまあまあの大金を持っていた。持っているだけではお金はお金のままで、無くならない。自棄になった私は、ある夜、家を出、街に出た。気づけば色町にいる。色々とあり、私となゆ(22才)はホテルに入る。402号室。ドアがしまると、なゆは私の口を吸ってきた。

あらすじ

 ちゆ。と音がする

 一度はなして、なゆはまた口を吸ってくる。今度は舌を入れてきて、べらべら動かす。なゆの左手が私の後頭部にそえられ、右手が背筋を撫でおろす。私はされるがままになっている。

「ふふ、」口をはなして、なゆが笑う。のびた唾液が口と口を、少しく渡って、床に落ちる。こちらを見上げて「お兄さん、エロいね。めっちゃ溜まってる」

 エロいのはおまえだろう、と思う。

 突っ立っている私に「シャワー、はいろ」となゆ。

 枇杷の皮を剥くようにして服をおとし、キャミソールになる。

「うん」競馬はむずかしいな、ほんとに、と私は思う。

「いっしょにはいろう。ぬがしてあげよう」

 と、なゆが言う。

「うん……ああ、いや。それぞれで入ろう」

「えー。ああ、変態のひとだあ」

「ふむ、え、そうなの?」

「お兄さんから入って」

「……うん」競馬って難しいなあ……。

 部屋はもともと、和室だったのだろう。広々としている。リ・フォームをしたのだろう。洋室風にはなっている。洋室になってから、すくなくとも20年は経っているのだろうと思われた。壁は砂かべである。洋風の絵がかかってあるが、雰囲気は和風である。

 海辺の絵。ヨットの帆が錯綜としている。空の色は、ちょうど今ぐらいか、今よりちょっとまえ。沖縄でいうと、うりずんの空である。

 床も、調度も清潔で、部屋の真ん中にダブルベッドがある。このベッドはまだ新しい感じがする。シーツがしろく、乾燥したにおいがする。

 お手洗い、浴場もセパレートで、それぞれ広く、黴などもない。

 わたしは浴場の、脱ぎ場でぬぎ、シャワーを浴びた。腋、陰部をよく洗った。上がってから、白いブリーフをはき、ティーシャーツを着、短パンを穿こうと思ったがどうせすぐ脱ぐのだからと思い、短パンを片手に部屋に出た。

 なゆは、冷蔵庫の水をのみながら、スマホを見ていた。ベッドに俯けになって。ヨガでいうところの、コブラの恰好で。

「じゃあ、こんどうちね」

 といってなゆは、着ているものをするすると脱ぎ、チェストの上に投げるように並べて全裸になった。白い皮膚。薄い色素の乳首。調整した陰毛と、下腹。おしりにできものなのか、しみがたくさんある、治っているしみである。

 腿、太もも、膝小僧があり、よくのびたふ(く)らはぎがある。足に赤黒いペディキュアがある。

 いま気づいたが、なゆの手は、爪がながい。つけ爪。灰色の長いドラキュラ的なつめが、本来の爪のうえに接着されている。

 こういうの、流行ってるよな、と私は思った。

 なゆは走るようにして、浴場に行った。

「まっててね」

 と言った。ゆっさ、ゆっさと乳が揺れていた。

本稿つづく

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