【掌編400文字の宇宙】もっと、よりよく、はやく、ちからをこめて
おまへらな、こんなんでこれから先のうのうと生きていけると思うなよ。なめんな。ミシンて知ってるか? ぼさーっとした顔しやがって。みすぼらしい恰好で、一生お針子でいいのかね。あんたらが十人いちんちがかりでやる仕事を、このミシンちゅう機械は一時間でやるんだわ。しかももっと出来がよくな。あのな、これからはミシンの時代や。手縫いなんてしてたらライバル…らいばるって意味わかってるか? 敵や。競合の、あれや、同業の。まあ言ってもわからんか。字も読めねえんだからな。
みとけよ。これからはな。ミシンちゅう機械をわたしは買います。そして十人ちゅう九人をクビにする。そしてな、残った一人にミシンの動かし方を学んでもらう。たしかにミシンは高いよ。けどな、あんたら十人に年中給料払うよりは、そのうち安くつくわけ。な。
こういう時代よ。ええか。勉強しなさい。機械に追い払われるのではなく、機械をあやつる人になりなさい。
以上や。
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