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【スケッチ】不登校ここの部屋④不登校とは
精確な数字は忘れたが、20日ぐらい学校に行ってないと不登校という扱いになる。ここは不登校児で、毎朝お母さんが学校に連絡をする。理由は体調不良。詳しくいうと、頭痛、腹痛、生理痛、頭痛、腹痛、生理痛。これの繰り返し。
じっさいに頭が痛いかんじがするし腹も痛いし、生理のときは痛いようなかんじがする。体温は6度8分。ぼさーっとしている。
凪子が部屋にいる。というかさいきんはほとんど住んでいる。ここの家は凪子のバイト先の、目と鼻の先であり、金持ちである。ここのお母さんは教員で、お父さんは企業アドヴァイザーである。
一方、凪子の家はシングルマザーで、母親は占い師である。非課税世帯である。
ここと凪子がおきてリヴィングに行くと、朝ごはんと昼ごはんが用意されている。ここは食べない。凪子はすこしだけ食べる。全部は食べずに、ふたりはまた部屋に戻る。
ここは英語を凪子に教える。凪子は算数がまったくできないが言語能力が優れているのでここが教える英語をたちまち覚える。
ここはこの日頭痛ということになっているので寝る。その間凪子はネットフリックスでインド映画を観ている。ここが起きると、凪子はインド語というのかヒンディー語というのか、それらを大体喋れるようになっている。
バイト先にはネパールの人がいるらしい。だからネパール語も分かる。
「ここちゃん、ピアスあけようか」
と凪子。ホッチキスみたいな器具をバッグから取り出す。
「痛そうや。いやや」
「だいじょうぶだって」
「不潔やし」
「だいじょうぶって」といって凪子はシー・ブリーズで器具を消毒する。
パチンッ
「痛ッ」
うちは涙目になる。
パチュンッ
「もうッいややって!」
「これだけよ。もうおわったから」
凪子がお母さんの部屋に行き、直径15センチぐらいの円形のイヤリングをうちの耳に強引に嵌める。もう痛みはないが、おもい。
「これ、取ったらだめだよ。とったら血噴き出して。そうなったら血がふきだすからな」
というわけでうちは直径15センチぐらいの円形のイヤリングをつけたままでいた。
🎤
17時になると凪子は出ていった。バイト先に行くのだ。22時までバイト。
ここも一緒に行きたかったが。というのもここはいつも一緒についていき、一番くじをしたり立ち読みをしたりして両親が帰ってくるまでの時間を潰すのである。
この日は寝ころんだままでいた。イヤリングがついているから。
自室の部屋にすわって、ぼさーっとしていた。
なんでこんなことするんやろ。耳に穴って。いくつもアナがあいているところに、わざわざなんで穴を穿つのやろか。
リヴィングに行くと、
「なつかしいな、それ。おれがあの、どこだっけ。どっかの島で買ったイヤリングじゃん」
とお父さんが言った。
「そうね」
とお母さんが言った。
本稿つづく